研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
22H04881
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西村 祐貴 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (20783012)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 未培養微生物 / 微生物ダークマター / メタゲノム / CPR / DPANN |
研究実績の概要 |
現在までに東京都内の地下水から一ヶ月ごとに一年間サンプリングを行い、ショートリード・ロングリード両方の次世代シーケンサー(NGS)に供した。取得したNGSデータを使ってアセンブルやビニングを行い、微生物種ごとのmetagenome assembled-genome (MAG)を約1,000個以上復元することに成功した。ロングリードのNGSデータを併用したことが要因だと考えられるが、これらのMAGのクオリティは非常に高いものが多く含まれていた。系統プレイスメントの結果、そのうちの約半数がCPRまたはDPANNに属することが判明した。さらにこれらのMAGに対して取得したNGSデータの50%以上が再マッピングできることから、本環境における微生物叢の半数以上がゲノムデータとして復元できたと考えられる。 CPR/DPANNの宿主を推測するため、復元されたCPR/DPANNのMAGと、それ以外の MAGにおける遺伝子水平伝播(LGT)の網羅的な検出を試みた。そのためにMAG間で保存されているオルソロググループを推定した後、各オルソロググループの系統樹を推測した。さらに得られた系統樹の樹形と種系統樹の樹形を比較することで、CPR/DPANNとそれ以外微生物のMAG間でのLGTを検出した。その結果複数のCPR/DPANNと非CPR/DPANNのMAG間で、5個以上のLGTが確認された。共生関係が既知の宿主-CPR/DPANNの一部でも同じ程度のLGTが検出できたので、これらの微生物も共生関係にあることが示唆された。 さらに千葉県柏市内でも2箇所で地下水の定期的なサンプリングを行い、ショートリードのNGSデータを取得した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的な遺伝子伝播の検出により、宿主-CPR/DPANNの共生関係を数組推測することができたため。また本来予定していたサンプリング地点に加えて、新たにCPR/DPANNが優占している環境を発見することもできたので、本研究計画は順調に進捗していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き復元したCPR/DPANNの宿主をインフォマティクス解析によって推定することを試みる。具体的には、時系列サンプルにおける存在量の共変動や、MAGから復元された代謝経路の相補性を確認する。昨年度に取得した千葉県柏市内の地下水のNGSデータについてもMAGの復元と、本環境におけるCPR/DPANNの宿主の探索を同様にして行う。またエマルジョンに共生関係にある2種の細胞を封入することで、両者の遺伝子が融合したDNAをPCRに増幅可能なことが近年報告されたので、その手法を本環境に生息するCPR/DPANNに適用できないかも検討する。推測された宿主-CPR/DPANNの組み合わせのうち、特に存在量が多い種に関しては特異的なプローブを設計してFISHに供することで、実際に両者が環境中に近接して存在していないかを調査する。宿主が同定できたCPR/DPANNのゲノムにコードされている細胞接着や認識に関する遺伝子に着目し、RT-qPCRやメタトランスクリプトーム解析を行うことで環境中における発現量を調べることで、共生関係を築く上で重要な役割を果たしている遺伝子を特定する。 CPR/DPANNが優占する環境から取得されたNGSデータやMAGを公共データベースからも取得する。上述の解析によって明らかになったCPR/DPANNの宿主や、共生に関して重要な役割を果たす遺伝子に焦点を当てながら、本研究で復元されたMAGとの比較解析を復元することで、他種に依存するCPR/DPANNが優先していいる生態系が成立する要因を見つけ出す。
|