本研究では、近年急速に集積が進む土壌微生物群集の一次情報を用いて、土壌生態系内で土壌微生物群集が発現する定量可能な物質循環機能(=有機物分解機能)に着目し、その制御因子を化学量論的に解明・管理することで、脱炭素化農業を実現する炭素隔離型ポストコッホ土壌機能生態系の創出に取り組んだ。具体的には、応募領域が有する畑作連用圃場@筑波大を主調査地として、国内外の畑地圃場を対象に調査・実験を行った。特に、土壌炭素循環の重要な指標である土壌微生物の炭素利用効率を目的変数として、様々な肥培管理・土地利用が土壌理化学性、養分環境、土壌微生物群集に与える影響を分析・数値化し説明変数とすることでこれらの関係性の解明に取り組んだ。 研究実績として、先行して研究を進めていたインド南部のバイオ炭や堆肥を施用した連用畑地圃場や、沖縄県内の土壌pH条件が異なる畑圃場で採取した土壌試料の分析・解析を進めると共に、当該応募領域が有する畑作連用圃場@筑波大からも表層土壌(0-15㎝)を新規に採取し、土壌微生物群集及び機能の解析に取り組んだ。この結果、インド南部および当該領域圃場では、各種資材利用に伴う土壌養分環境の改善、特にリン制限の緩和に伴い、土壌微生物群集が明確に変化し、その結果として炭素利用効率が改善することを示したほか、沖縄での結果からは、土壌pHが土壌微生物群集が有する炭素循環機能に与える影響として、炭素利用効率よりも代謝回転速度の側面からより影響が大きいこと、などを示した。今後は得られた知見をまとめて投稿準備を進める。
|