• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

目立たない分子から探るポストコッホ型異種微生物間相互作用

公募研究

研究領域超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学
研究課題/領域番号 22H04888
研究機関大阪公立大学

研究代表者

甲斐 建次  大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (40508404)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード異種微生物間相互作用 / ポストコッホ分子
研究実績の概要

モデル糸状菌としてAspergillus nigerとFusarium oxysporumを採用し、それらを取り巻く細菌コンソーシアムとの化学コミュニケーションシステムを構築し、時空間におけるポストコッホ分子の質・量的変動を解析する。本研究では、3つの課題「現有のポストコッホ分子候補の作用機序解析」、「新規ポストコッホ分子の単離・構造決定」、「ポストコッホ分子の生態学的機能の解析」を設定する。そして、天然物化学・生物有機化学駆動型のポストコッホ微生物学を創出する。
A. niger系の解析を進めるために必要な、in vitroのCRISPR-Cas9システムを構築した。RNA-Seqから見出した候補遺伝子に対して上記ゲノム編集を実行し、collimonin Bに応答して蓄積すると黄色色素の生合成遺伝子の1種の破壊に成功した。もう1種の遺伝子破壊については、検討を進めることができているが破壊までは達成できていない。F. oxysporumに対して厚膜胞子誘導を行うralsotoninの解析は順調に進み、ralstonin類が厚膜胞子誘導に必須であること、以降の真菌寄生に必須であることが判明した。また、ralstonin生合成遺伝子の進化に関してもある程度重要な知見を得ることができた。さらに、新しいポストコッホ分子の探索も順調に進み、Collimonas fungivoransから既知・新規なNRPSリポペプチドを候補として見出した。これらの新しい分子の単離・構造決定と生合成遺伝子の同定の一部についても、1年目で取り組むことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1年目に目標としていた多くの項目が達成された。具体的には、A. niger系の解析を進めるために必要な、in vitroのCRISPR-Cas9システムを構築した。RNA-Seqから見出した候補遺伝子に対して上記ゲノム編集を実行し、collimonin Bに応答して蓄積すると黄色色素の生合成遺伝子の1種の破壊に成功した。F. oxysporumに対して厚膜胞子誘導を行うralsotoninの解析は順調に進み、ralstonin類が厚膜胞子誘導に必須であること、以降の真菌寄生に必須であることが判明した。また、ralstonin生合成遺伝子の進化に関してもある程度重要な知見を得ることができた。さらに、新しいポストコッホ分子の探索も順調に進み、Collimonas fungivoransから既知・新規なNRPSリポペプチドを候補として見出した。以上のような理由から、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

1年目で見出したポストコッホ分子生産細菌のゲノム解析を実行する。完全なゲノム解析は必ずしも必須ではなく、ある程度ロングリードで遺伝子配列を読めさえすれば、二次代謝産物の生合成遺伝子クラスターは見出せる。各種二次代謝生合成用のアルゴリズムを使い、ポストコッホ分子の生合成酵素遺伝子の候補を挙げていく。候補遺伝子が発見された場合は、遺伝子欠損株を作製する。
ポストコッホ分子生産細菌とA. nigerあるいはF. oxysporumを共培養(1対1の組み合わせ)して、顕微鏡下で相互作用を経時的に観察する。続いて、ポストコッホ分子欠損株と真菌類の共培養を行い、分子が欠損することで相互関係にどのような変化が生じるのかを調べる。組み合わせを変えて観察を行う。続いて、GC/MSとLC/MSを用いた共培養物メタボローム解析を行い、代謝レベルでの変化を精査する。
A. nigerあるいはF. oxysporumとポストコッホ分子生産菌コンソーシアムからなる複合モデル系を立ち上げる。別研究課題で確立しているガラスボトムディッシュを使った共培養法を採用する。具体的には、ディッシュの底にごく少量の寒天培地を入れ、そこに糸状菌を1日程度生育させる。その後、ポストコッホ分子生産菌を混合状態で加え、培養の経時的な変化を顕微鏡を使って観察する。細菌類の観察が難しい、各菌株の判別が難しいときなどは、適時蛍光タンパク質を発現させるなどの対策を講じる。上手く機能しそうであることが確認できたら、1種ずつポストコッホ分子生産菌を合成欠損株へと変え、複合系であるポストコッホ分子がなくなった時にどのような変化が生じるのかを調べていく。各菌の組成、形態、ポストコッホ分子の動態、代謝物組成を具体的には調べる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Discovery of Cyclic Lipopeptides Ralstopeptins A and B from Ralstonia solanacearum Species Complex and Analysis of Biosynthetic Gene Evolution2023

    • 著者名/発表者名
      Nao Matsukawa, Chiaki Tsumori, Kouhei Ohnishi, and Kenji Kai
    • 雑誌名

      ACS Chemical Biology

      巻: 18 ページ: 572-582

    • DOI

      10.1021/acschembio.2c00907

    • 査読あり
  • [学会発表] 糸状菌にも寄生する植物病原細菌2022

    • 著者名/発表者名
      甲斐建次
    • 学会等名
      第21回糸状菌分子生物学コンファレンス
    • 招待講演
  • [学会発表] 植物と真菌の両方に寄生する青枯病菌の感染戦略2022

    • 著者名/発表者名
      甲斐建次
    • 学会等名
      第22回農薬バイオサイエンス研究会
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi