研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
22H04889
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
杉本 真也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (60464393)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 複合系 / 透明化 / イメージング / 細菌 / 真菌 / ライブセルイメージング / iCBiofilm |
研究実績の概要 |
地球上の微生物の大部分は純粋培養が困難な難培養性の微生物であり、かつ、単細胞の状態ではなく、バイオフィルムのような集合体として存在する。しかし、分厚いバイオフィルムは屈折や散乱によりレーザー光が深部まで到達しないため、従来の光学顕微鏡法では観察が困難である。そこで本研究では、独自に開発した瞬間バイオフィルム透明化(iBC, instant Biofilm ClearingからiCBiofilm, instantaneous Clearing of Biofilmに呼称を変更)法を用いて、試験管内および生体内において複数種の微生物が形成した複合バイオフィルムを観察し、任意の細胞の空間分布、細胞外マトリクス成分の局在、微生物間あるいは微生物-宿主間の相互作用などを明らかにすることを目的とした。また、微生物が生きたままの状態で観察できるというiCBiofilm法の利点を活かし、透明化ライブセルイメージングにより、バイオフィルムの形成機構や抗菌薬耐性の機序を解明することを目指した。
本年度は、複数の細菌および真菌を用いて分厚い複合菌種のバイオフィルムが形成される条件(菌種の組合せや培地組成など)を調べた。そして、分厚い複合菌種のバイオフィルムに対してiCBiofilm法の有効性を確認した。また、バイオフィルム形成過程を明らかにするため、菌の生育を阻害しない蛍光プローブと透明化試薬を培地に添加し、バイオフィルムの形成過程を菌が生きたままの状態でイメージングする方法を確立した。これらの成果を論文にまとめ、Communications Biology誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究項目を実施し、得られた成果を論文に発表出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
1.透明化FISH法の確立と複合バイオフィルムモデルの観察: 次年度は複合バイオフィルム内での各菌種の分布を可視化する方法を確立する。ガラス底培養皿の中で複合菌種のバイオフィルムを形成し、パラホルムアルデヒドなどで固定した後、細胞膜透過処理を行う。その後、細菌特異的蛍光プローブと菌種特異的蛍光プローブを用いて染色する。そして、複合バイオフィルムを透明化し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察する。細胞膜透過処理の過程でバイオフィルムの構造が壊れる可能性があるため、使用する薬剤の濃度や処理時間を適宜調整する。
2.透明化ライブセルイメージング: 2022年度までに運動性のない微生物(ブドウ球菌やカンジダ)のバイオフィルムを菌が生きたままの状態で透明にしながら観察することに成功したが、運動性のある細菌のバイオフィルムについての検討は不十分であった。そこで次年度は運動性のある細菌(大腸菌、緑膿菌、枯草菌など)のバイオフィルムの観察を試みる。既存のiCBiofilm試薬が適しない場合は、新たにライブセルイメージング用の試薬を探索する。
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