公募研究
東京都内の3自治体で行なっている大規模思春期コホートの追跡データを収集し、2600人超の10~16歳時にわたるおける4時点縦断データを統合した。現実世界で抑うつという困難が起こった際に、それを自覚して「当事者化」できることは、その後の精神的健康の回復に大きく関わるのではないか、という仮説を検討するため、抑うつに対する援助希求意図に注目した。上記コホートの縦断的データ収集において、思春期の参加者に対し、自記式質問紙においてうつ病のヴィネットを用い、抑うつに対する援助希求意図を評価した。自分がヴィネットと同じ状況になった際に誰かに相談するかどうかを問うことで、抑うつに対する援助希求態度を二件法で評価した。そして、思春期における援助希求意図の縦断変化を分析した。研究参加者全体において、10歳から16歳へと年齢が高くなるにつれ、援助希求意図を持つ割合は減少することが分かった。10歳時点では女子の方が男子より援助希求意図を持つ割合が高かったが、年齢が高くなるにつれて性差は減少し、思春期後期においては援助希求意図に有意な性差はみとめられなかった。10~16歳の4時点において援助希求意図を持ち続ける参加者は約4割弱であり、一方で、4時点において援助希求意図を一貫して持たない参加者は約5%であった。4時点の追跡調査において、過半数の参加者では援助希求意図の変化がみられた。思春期前期から後期にかけての変化としては、援助希求するように変化する割合は男子の方が高く、援助希求しなくなる割合は女子の方が高かった。
2: おおむね順調に進展している
東京都内の3自治体で行なっている大規模思春期コホートを活用し、2600人超の10~16歳時にわたるおける4時点縦断データを作成することができた。抑うつに対する援助希求意図の4時点にもわたる縦断的変化を検証することができたのは世界初の試みである。4時点において同じ手法で援助希求意図を評価していたため、その詳細な縦断的変化も明らかにすることができた。また、参加者の基礎背景情報を用いることで、抑うつに対する援助希求意図の縦断変化の性差についても検討することができた。
東京都内の3自治体で行なっている2600人超の大規模思春期コホートの10~16歳時にわたるおける4時点縦断統合データを活用し、思春期における抑うつに対する援助希求意図の年齢変化についての解析を進めていく。自記式質問紙でうつ病のヴィネットを用い、自分がヴィネットの状態になった際に援助希求するかどうかを問うことで、抑うつに対する援助希求意図を評価する。思春期における抑うつに対する援助希求意図の年齢変化については、その軌跡や性差についての解析も進めていく。また、抑うつに対する援助希求意図の変化やその軌跡と精神的健康の関係についても解析を行っていく。
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European Child and Adolescent Psychiatry
巻: online ahead of print ページ: NA
10.1007/s00787-023-02183-y
生体の科学
巻: 74 ページ: 152-157
精神科
巻: 41 ページ: 553-559