本研究課題では、日本沿岸における漁獲量変動に着目し、過去数百年にわたって環境・人がどのように関わり、どう影響してきたかを明らかにすることを目的に、過去に記録された文献資料から環境と人間活動、水産業に関係する情報を収集・整理した。収集した文献資料のほとんどは、各機関のホームページ等で公開されている一部を除き、国や都道府県、大学などの図書館や公文書館等に資料が保存されているので、直接現地を訪問し、資料の保存状態(紙媒体やマイクロフィルムなど)や保管年代を確認し、複写できるものはコピーやスキャナーで収集した。日本の南岸を流れる黒潮と日本海を北上する対馬暖流の影響を受けやすい都道府県(青森、岩手、茨城、千葉、神奈川、静岡、三重、和歌山、鹿児島、新潟、富山、石川、福井、島根、鳥取、長崎など)を中心に資料を収集した。明治政府が日本国内の統計記録を取り始めたのが、明治中期以降であったので、水産業に関する統計記録が残る明治中期から現在と記述だけ残る近世から明治初期の二グループに分けた。近世から明治初期は、各都道府県・市区町村の郷土史(県市町村史)、郷土史で扱われている古文書、地方に残る古記録・日記、近世に関する書籍を中心に、明治中期から現在は、農林水産省図書館に保管されている農商務統計表、農水省統計表、各都道県統計書、各都道県の農林水産統計年報、各市場の記録を中心に収集した。 収集した資料の一部を整理し、石川県における統計記録が残る過去120年分と当地域に残された江戸時代の日記を用いて、主に流通・消費する魚種(イワシ、ブリ、海鼠)について解析を行なった。その結果、豊漁・不漁期に数十年周期の変動が見られ、魚種によっては、数年周期になることを確認した。また、日記からは、季節毎に魚種に関する記述数の多寡が見られ、現在の市場における取扱量の季節変化と一致することが確認できた。
|