巨視的物体の量子状態の実現と重力の量子性の検証に向け、光共振器を用いてレーザー光と結合した鏡(光学機械振動子)の理論模型の構築と量子状態の理論予言を行なった。第一に、現在実験で実現されている懸架鏡の光学機械振動子の理論模型として、有限の大きさを持った鏡と梁からなるビーム模型が光共振器のレーザー光と結合する理論模型をラグランジアンから出発して定式化を行なった。その結果、低周波数では重心の運動を表す振り子モードに加えて、鏡の回転を表す回転モードの2 モードによる定式化が可能であることを示した。梁の曲がりに伴う散逸を取り入れると、その周波数特性は周波数の逆数に比例する構造減衰で記述できることも示した。また、懸架鏡の光連続測定とフィードバック制御を想定し、ウィーナーフィルターを用いた推定により実現可能な量子状態の理論評価を行なった。このために必要な懸架鏡の振り子モードと回転モードに対する雑音を除去するウィーナーフィルターを構築した。キャビティ光の連続測定の条件下で実現される振り子モードの分散を表す条件付き共分散行列を評価することにより、実現される量子状態を評価した。 その結果、回転モードの適切な取り扱いにより実現される振り子モードの量子状態を明らかにした。それにより現在実現されている実験パラメーターを統合することで、ミリグラムスケール物体の量子状態の実現が可能であることを理論的に示した。さらに、これらの懸架鏡を二つ組み合わせたファブリ・ペロー・マイケルソン干渉計を構成することで、二つのミリグラムスケール物体の量子もつれ状態の実現も可能になることを理論的に明らかにした。これらの結果は、重力の量子性の検証実験に向けたマイルストーンとして重要である。
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