量子操作として、正弦二乗変形やその一般化などを組み合わせた量子クエンチを考えた。 重力双対を持つ場の理論 (Holographic CFT) に対してこれらのクエンチを考えることで、文字通りワームホールやブレーンの形を変形させることを考えた。また、比較のために同様のクエンチを通常の量子スピン系に対しても行なった。結果として、従来のAdS/CFT対応では見られない興味深い現象が多く現れることが分かった。 通常の holographic CFT において、系の局所的な励起の時間発展を考えると、量子情報量の時間発展は自由場などが従う準粒子描像から逸脱する。しかしながら、上述の量子操作で生成した局所的な励起状態は、通常の(2次元) holographic CFT のHamiltonian による時間発展に対して準粒子描像に従うことが分かった。また、2次元 holographic CFT は通常2体量子相関の寄与が支配的だと期待されているが、上述の量子操作の後では、ワームホール時空がある種の3体量子相関を持つことが明らかになった。これらの操作の一般化を用いることで、ワームホール時空を”分解”することができることも示唆している。さらに、ブレーンを含む時空 (境界状態) に対して同種の変形を考えることで、笠-高柳公式などで導入される時空の cutoff surface をどのように取るべきか、などに関しても新しい知見を得ることができた。これらの量子操作は、高いエネルギーの励起状態や直積状態から2次元CFTの真空状態(の部分系) を構成するためにも用いることができることが明らかになった。
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