研究実績の概要 |
2022年度は、査読付き論文を7本発表し、外部での講演を14回行った。その中でも、論文 4) K. Kohri and K. i. Maeda, A possible solution to the helium anomaly of EMPRESS VIII by cuscuton gravity theory, PTEP, 2022, 9, 910、において、次のことを発表した。量子重力理論の候補である修正重力理論であるcuscuton gravityにおいて予言される重力定数は、標準的なニュートンの重力定数より小さい可能性がある。最近のすばるのEMPRESS VIIIチームによるヘリウム4のprimordial valueの観測が、標準ビッグバン元素合成による生成量より有意に小さい値を報告したが、これが正にcuscuton gravityで説明できることを指摘した。また、論文 5) M. He, K. Kohri, K. Mukaida and M. Yamada, Formation of hot spots around small primordial black holes, JCAP, 2023, 1, 27、において、次の内容を報告した。Big Bang Nucleosynthesisの時期の前に蒸発する原始ブラックホールの周りに、熱い火の玉が一瞬つくられる現象を詳しく調べた。この火の玉の中では、バリオン数やdark matterがつくられる可能性があり、全く新しい宇宙像を示している。これらの結論は、量子重力理論の量子性をテストする上で極めて重要で、オリジナルな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子効果による蒸発する原始ブラックホールを観測することにより、重力の量子性のヒントを得るための理論的な準備はほぼ整った。具体的に、論文5) M. He, K. Kohri, K. Mukaida and M. Yamada, Formation of hot spots around small primordial black holes, JCAP, 2023, 1, 27、において、蒸発する原始ブラックホールの周りで、標準理論を越える量子現象が起き得ることを詳細な計算と共に示し、その結論を査読付き英文専門誌に論文として発表したことは、大きなマイルストーンであった。
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