本研究では、独自に開発した凍結乾燥パルス圧力印加オリフィス噴射法(Freeze-Dry Pulsated Orifice Ejection Method; FD-POEM)により気孔を積極的に導入した積層造形用球形セラミックス粉末を創製し、高いレーザ吸収性と高い断熱性を両立させ、緻密なセラミックス積層造形体を作製することを目的とする。2023年度は、FD-POEM法により作製したAl2O3-40mol%ZrO2 (AZ40)多孔質粒子を用いてレーザ積層造形を行い、溶融したセラミックス皮膜を調べることに取り組んだ。積層造形装置はコンセプトレーザMLab Rであり、アルゴン雰囲気中で造形を行った。FD-POEM法により作製したAZ40複合粉末を、9層分レーザ照射を行った後のセラミックス表面を走査型電子顕微鏡により観察したところ、40から80W程度の低出力でも十分に溶融できることが判明した。出力が高くなるとレーザ照射痕が明瞭になり、ビード境界が観察された。低レーザ出力の方が膜厚、組成分布とも均質で緻密なAZ40皮膜を形成できることが明らかとなった。走査速度に関しては溶融挙動の変化は明確に見られなかった。多孔質粒子内部をレーザが多重反射しながら吸収されたことや、AZ40に含まれるZrO2のバンドギャップに変化が生じ、効率よくレーザを吸収したものと考えられる。以上より、当該研究の主な目的である高い気孔率を含有する多孔質球形セラミックス粒子を作製し、これを用いて緻密なセラミックス積層造形被膜の作製に成功したと言える。
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