チタン合金は高比強度、高耐食性及び優れた生体適合性を有しており、航空宇宙、化学工業や医療機械など幅広い分野で構造材料として利用されている。一方で、これら分野では省エネルギー化や信頼性向上を背景に構造材料の軽量化に加え、Ti合金の高強度化が望まれる。そのため、安定なセラミックス系強化材を導入したTi基複合材料(TMC)の開発も行われている。本研究では、負に帯電した酸化グラフェン(GO)は、静電気力によって正に帯電したTi-15Mo-5Zr-3Al(Ti1553)粉末の表面に均一に付着し、流動性、粉末サイズ及び粒度分布を変化させることなくGO/Ti1553複合粉末を得た。レーザ3次元粉末積層造形法(L-PBF)プロセスの最適化を経て、緻密なGO/Ti1553造形体の製造に成功した。微細構造の観察から、GO/Ti1553の造形体は完全にβ-Ti相で構成されており、GOシートの残留や炭化物の析出は確認されなっかた。0.2wt.% GOの添加により、Ti1553合金の引張強度が992MPaから1166MPaに増加した。これは、炭素または酸素原子の固溶強化と結晶粒微細化に起因していると考えられる。さらに、1123 Kでの熱処理により、TiC粒子がTiマトリックスに析出した。本研究は、L-PBFを活用して高機能チタン基材料の開発が可能であることを示唆している。これまで成し得なかったナノ粒子強化型高力学機能スーパーチタン合金を作ることができ、微細組織の制御による使用環境条件に対応して機械的性質の調整が可能になる。高強度・高靭性β-Ti基複合材料は、自動車産業及び航空宇宙おける多くのエネルギー効率の改善、持続可能な低炭素社会の実現に貢献できる。
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