研究領域 | 超温度場材料創成学:巨大ポテンシャル勾配による原子配列制御が拓くネオ3Dプリント |
研究課題/領域番号 |
22H05279
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
本間 剛 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70447647)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | レーザープロセス / 全固体電池 / イオン伝導体 / 結晶成長 / 結晶化 / 配向 / 固体電解質 / ガラス |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が確立してきたガラスの結晶化とレーザー照射による非等温プロセスを融合し、酸化物系全固体ナトリウム電池における固体電解質と活物質界面の構築と形態評価および物性との関係を解明する。近年、ナトリウムイオン二次電池(SIB)の正極活物質として様々なNa+イオンホスト材料が研究されている。中でもナトリウム鉄リン酸系材料を用いた材料は低コストで資源量が豊富であることから注目されている。我々は、全固体SIBの作製において、通常の熱処理だけではなくレーザープロセスが界面形成に有効であることを着想し、これまでにレーザーを用いた局所加熱によるNa2FeP2O7、NaFePO4のガラス化および固体電解質との一体化を報告している[1], [2]。これまでは、網目形成剤として機能するリン酸塩(P2O5)を含む組成に注目したが、網目形成剤を含まない層状酸化物NaMO2(M:遷移金属)のレーザー局所加熱による溶融急冷および固体電解質との一体化も期待できる。そこで本研究では、正極活物質にβ-NaFeO2(理論容量:242mAh/g)を選択し、レーザー照射により局所加熱した際の構造変化および活物質-固体電解質間の接合界面を評価した。 レーザー照射後の試料は、β-NaFeO2に由来する回折が見られ、回折強度は弱くなった。また、結晶子サイズが約600nmから約300nmに縮小した。レーザー照射後の試料を大気雰囲気において650℃で3時間熱処理するとα-NaFeO2に由来する回折が現れた。同様に850℃で3時間熱処理した試料では、β-NaFeO2に由来する回折のみ見られた。通常β相からα相への相転移は長時間の熱処理を要するが、レーザー照射後のβ-NaFeO2は瞬間的な溶融急冷により誘起した非晶質が介在し、短時間の熱処理で容易にα-NaFeO2へと構造が変化したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は課題が採択されてから、直ちに実験環境の構築に取り組んだ。研究開始当初は、我々が以前から進めているリン酸鉄系の結晶化ガラスを対象として、レーザー光照射による溶融凝固課程でのガラス形成と結晶化を評価することを想定していたが、領域代表との面談やキックオフミーティング等を通して、レーザー照射の対象を、より結晶化しやすい酸化物系、つまりガラス形成酸化物が少ない組成へのレーザープロセスを適用するように変更した。この結果、岩塩構造の正極活物質として知られるNaFeO2の局所溶融と、溶融凝固による緻密化および結晶配向を誘起することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は採択されてからの研究実施が短期間ではあったが、二次電池用材料へのレーザープロセスの適用は界面形成に資するのみならず、結晶配向や準安定相の形成など、従来技術では達成できない複合セラミックスの創製に大いなる可能性をもたらすと期待できる。来年度は、レーザー誘起によって形成した鉄系正極活物質における、レーザー照射条件と配向状態および、準安定相であるα相の形成についてより詳しい評価を進める。 従来では着想できなかった新たな発見ができたことから、引き続き計画班との連携を密にして研究推進していきたい。
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