全固体ナトリウムイオン電池は、レアメタルに依存することなく安全性に優れた次世代電池として期待されている。しかしながら良好なイオン伝導性を発揮するためには、物質中のイオン伝導度だけではなく、正極化物質、固体電解質、負極活物質からなる部材内および部材間の界面抵抗を低減することが重要である。本研究では酸化物ガラス中に添加した遷移金属イオンの光誘起―無輻射緩和による発熱を利用し、固体電池を構成する材料の局所的な溶融凝固と微構造の変化、および電気化学的特徴を明らかにし、以下の成果を得た。リン酸鉄ナトリウムへのレーザー照射におけるメルトプールの形成過程を直接観察し、通常の熱処理過程との違いを明らかにした。正極活物質でリン酸を含有しないNaFeO2へのレーザー照射によって溶融凝固を確認し、レーザー光の走査に対して異方性のある結晶成長と固体電解質基板との接合を達成した。レーザー照射によって形成した非晶質相が介在し、その後の再熱処理によって、準安定なα相の形成が確認できた。正極活物質としてはβ相よりもα相の方が好ましいことから、形態を制御した状態で構造多型の制御へ期待できる。 インピーダンスを評価したところ粒界抵抗が低下しており、溶融凝固による緻密化が固体電池の作製に効果的であることを明らかにした。またこの手法は負極活物質であるスズを含むガラスセラミックスに対しても適用可能であり、ヘテロ界面を有する異種セラミックスの溶融凝固と界面形成に有望であることを実証した。
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