本年度は,レーザ粉末床溶融結合(L-PBF)法で作製したAl-12Si (mass%)合金およびそれに熱処理(200℃~530℃)を施した試料の組織をFE-SEMにより観察した. L-PBF造形Al-12Si合金は,初晶α相をα/Si共晶組織が包囲するセル状組織形態を有する.この組織形態は,熱処理を施すことで変化し,530℃の熱処理によってSi粒子が分散した組織形態へと変化する.こうした大きく異なる組織形態を定量化するために,パーシステントホモロジー(PH)解析を行った.0次PH解析からは,熱処理に伴うSi粒子のサイズおよび粒子間距離が大きくなることに加えて,大きなSi粒子の近くにはSi粒子が少ないといったSi粒子分布に関する情報が定量化された.1次PH解析から,組織形態を表現する記述子として,第一主成分の傾きを解析した.この指標を用いることで,熱処理に伴って,組織形態がセル状および粒子分散のどちらにより近いかを定量的に議論できる.また,PH解析から得られた組織の記述子は,一般的な組織の記述子よりも合金の引張強度とよく相関することが明らかとなった. また,L-PBF造形したAl-12Si合金は溶融池スケールでの組織の不均一性を有し,それに起因して引張延性に異方性が生じることが知られている.加えて,組織の不均一性および引張延性の異方性は熱処理に伴って低減する.そこで,上述のPH解析によって得られた組織の記述子を溶融池内部と境界付近でそれぞれ解析し,内部に対する境界の変化率を定量化した.この変化率と引張延性の間には良い相関が認められ,L-PBF造形材が有する引張延性の異方性に影響する組織不均一性を表現する記述子を見出すことができた.
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