付加製造におけるデジタルツイン構築に向けて,材料組織を高精度に予測可能な数値計算法の構築が急務である.本研究では,粉末床溶融結合方式を対象とし,結晶粒スケールの組織予測法の開発を二つの時空間スケールから行った.一つは,溶融池内の流動と温度をできる限り詳細に解き,それらに影響を受ける材料組織を高精度に予測する手法.もう一つは,できる限り簡便な計算で複数層・複数トラックのビーム走査における組織予測を可能とし,最終的には様々なスキャンストラテジーに対応する手法である.
前者においては,多結晶凝固multi-phase-field (MPF)モデルと混相流MPFモデルにNavier-Stokes方程式を連成させ,PF法のみで全界面を表現するモデルを構築し2次元計算を可能とした.2種類のMPF計算においては,各ステップの計算後にPFプロファイルを変換する手法を導入した.また,3次元計算を可能とするために,格子ボルツマン法による液相流動を表現するモデル化に着手した.
後者においては,温度の時空間発展を移動点熱源の理論式で表現し,多結晶凝固MPFモデルに導入した.また,複数GPU並列計算による高性能計算を可能とした.これによって複数層・複数トラックのビーム走査を可能としたが,それでも計算コストは高い.そこで,計算対象領域を溶融池近傍に限定する計算高速化法を導入し,複数のスキャンストラテジーへの対応を可能とした.
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