本研究課題は様々な温度勾配条件、冷却速度条件下での凝固(結晶成長)プロセス、造形される材料・部材の形状や内部構造(結晶構造、原子配置の化学秩序・偏析、格子欠陥や欠陥組織)の原子スケール予測を実現し、超温度場や急冷過程における材料内部や材料表面・界面での原子運動の詳細とその背景にある物理を明らかにするために、3Dプリントによる材料創製プロセスで現れる超温度場下や急冷過程での原子運動を高精度かつ高速に解析可能な原子モデリング手法を構築することを目的とする。本年度はニューラルネットワークに基づく高精度な原子間相互作用の構築に取り組んだ。 原子間相互作用の構築にはAtomic Energy Network (aenet)を用いて、Nb-Si合金系のNNPの構築を行った。学習データセットとして、体心立方構造の純Nbおよび5at. %までのNb-Si固溶体の安定構造、単軸引張圧縮・単純せん断変形時の安定構造、原子空孔、侵入型原子、表面などの欠陥を含む約16000構造のデータを作成した。学習用データセットの原子構造に対応するエネルギーは密度汎関数法に基づく第一原理電子状態計算ソフトウェアVienna Ab initio Simulation Package (VASP)により求めた。学習後、学習用データセットおよび検証用データセットの構造及び、凝集エネルギー、格子定数、弾性定数、空孔形成エネルギーおよび表面エネルギーを求め、構築したNNPは学習・検証用データセットの構造に対する第一原理計算結果に加え、材料の弾性特性および表面特性をよく再現できることを確認した。さらに、凝固シミュレーションを実施する際に重要な性質である融点の予測を行い、融点が再現できることを確認した。
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