研究領域 | Slow-to-Fast地震学 |
研究課題/領域番号 |
22H05303
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤山 和貴 京都大学, 理学研究科, 助教 (10936991)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 岩石物理モデル / 浸透率 / アスペリティ / 弾性波トモグラフィー / 電気比抵抗 / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
本研究では,断層内流体流動を決定づけるためのマクロな亀裂を対象とした岩石物理モデルを構築することを目的としている。本年度は,天然断層面のフラクタル特性を模擬した3Dプリンタアナログ試料を用いて,断層面の応力を変えながら亀裂開口幅と岩石物性値(弾性波速度・電気比抵抗)を測定する実験システムを構築した。本実験に使用するアクリル樹脂の造形(非整数ブラウンで数値的に作成した亀裂面データ)と変形テストが完了し,導入した実験設備で問題なく測定できることを確認した。当初の計画にはなかったが,亀裂面に垂直な方向の流路の発展を可視化しながら変形・物性測定ができるような治具を考案し,実際に着色した流路が問題なく可視化できることを確認した。さらに圧電素子を多点に配置し複数アレイで弾性波速度トモグラフィーを実施し,問題なく透過波と反射波が取得可能であること,アスペリティの接触状態に応じて速度の値に差異があることを実際に確かめられた。速度変化の解析を高速で行えるようにアレイ切替を自動で行うシステムとAICを用いて初動を自動ピックするシステムも実装が完了した。半導体供給不足により実験室立ち上げには時間を要したが,その間一連のデジタル岩石物理シミュレーション手法をアップデート(境界要素法・有限体積法)し,kmスケールのデジタル亀裂に対してアスペリティの変形・流体流動・電気伝導・応力-ひずみ解析を同時に実現した。その結果,亀裂のサイズ・粗さ・せん断変位によって浸透率,比抵抗,弾性波速度がそれぞれ異なるスケール則で変化することが明らかとなり,今後実験と組み合わせて精緻な議論に繋げる基盤が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では実験を先行して行う予定であったが,半導体供給不足により実験システム導入に遅れが生じ,その間シミュレーション手法の構築を前倒しして実施した。その結果,次年度に実施予定であった数値計算手法のアップスケールを先に実装完了することができ,予定していた実験に関する予察的結果を得ることができた。電気比抵抗や弾性波速度トモグラフィーのシステムも実装が完了し,速度から接触面積に変換する手法も概ね確立することができた。さらに当初計画にはなかった浸透率の測定システムや,着色した流路のその場観察ができるシステムを考案し,流路の変化や接触面積の変化を精度良く求めることができる等想定以上の進展があった。また学術変革研究を通して本研究課題に関連する内容が共同研究に発展する等予想以上の進展が得られたことから,計画以上の進展が得られていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は天然断層面のフラクタル特性を模擬した3Dプリンタアナログ試料を用意し,その場観察した流路面積と弾性波速度トモグラフィーで求めた接触面積を比較し,普遍的に相互変換可能なモデルを構築する。アナログ試料でモデルの妥当性を評価した後は,沈み込み帯の実岩石試料を採取しての実験も計画している。これらを最終的には今年度実装したkmスケールのデジタル岩石物理シミュレーションや学術変革研究の共同研究を通して得られた実際の観測物性値変化と照らし合わせ,それらの間のスケール則の鶏鳴に向けて研究を進める。
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