巨大地震を引き起こす天然の断層帯は複数の弱面から構成される複雑な幾何構造を形成している。そのため、弱面同士の相互作用が実際の断層のすべり挙動に大きな影響を与える可能性がある。しかし、断層の特徴を評価するために実施されてきた摩擦実験の多くは、一つの弱面から構成される断層を模擬した単純な系で実施されてきた。そこで、本研究では、近接する2面の弱面から形成される断層帯を模擬した試験装置の開発を行った。 開発した装置の特徴は2つの断層のすべり量とすべり速度を個別に測定するために電磁誘導式アブソリュートエンコーダーを2つ設置していることである。しかし、初めに組み立てたシステムではデータのノイズが大きかった。そこで、データ取得方法を変更した結果、ノイズの問題は改善された(BISS形式の出力信号をPLCによる記録)。また、せん断すべりに伴う断層の圧密・膨張を精密に計測するシステムを追加した。現在、2つの面に同じもしくは異なる粒状物質を使用した条件、載荷速度を変更した条件でのすべり挙動の評価を実施しており、測定した特徴をもとにスロー地震の発生プロセスを評価していく予定である。 一方、開発した2面同時せん断実験と同じ実験条件で実施した「すべらない砂甲子園」(50種類の天然の粉体の中から一番摩擦が高い粉体を評価する実験)では「かき殻を砕いた粉末」が一番高い摩擦を示すことがわかった。そこで、その原因を明らかにするために各粉末の幾何学的・鉱物学的特性を測定して考察を行った。その結果、かき殻を砕いた粉末は、他の粉体と比較して粒子が扁平、かつ角ばった形状をしていること、粒径分布の幅が広いことがわかった。この粉体の幾何学的特徴により、粒子同士の接触面積が大きくなることで摩擦係数が高くなることが分かった。一方、海浜砂はかき殻粉末と反対の幾何学的特徴を示し、摩擦係数が非常に低くなったことと整合的である。
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