申請者はメカノケミカル鈴木-宮浦クロスカップリング反応の開発に成功しているが、さらなる効率改善のためには、振動数やボールの数や大きさなどの各メカノケミカルパラメータが収率に与える影響を深く理解することが必要であると考えた。そこで本研究では、振動数、ボールの数、サイズ、ジャーのサイズ、材質などを変数とする線形回帰分析を行い、メカノケミカルクロスカップリングの収率予測モデルの構築を検討した。このデータサイエンスに基づく分析により、各化学工学的なパラメータが与える影響を「可視化」し、ブラックボックスとなっていたメカノケミカルプロセスの詳細を明らかにすることを目的とした。2023年度における本領域での研究活動においては、研究体制として、北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)に所属しているVarnek教授 (研究協力者、データ解析専門)、Stub特任助教 (研究協力者、データ解析専門)、Sidorov特任助教 (研究協力者、データ解析専門)と共同研究チームを形成し、主にトレーニングセットとなる150反応程度の実験データの収集に注力した。また、得られたトレーニングデータをもとに線形回帰分析を行い、メカノケミカルクロスカップリングの収率を予測する予備的なモデルの構築に成功した。モデルにはまだ不完全な部分があるため、2024年度も以降も継続して共同研究を実施し、メカノケミストリーとデータサイエンスの日本発融合研究を推し進める。また、本領域の研究活動として、二軸混錬機を用いた固体フロー合成法の開発にも着手し、鈴木-宮浦クロスカップリング反応の固体フロー化にも成功した。
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