研究実績の概要 |
前年度に構築したBINOL型配位子のデータベースを利用して、ホウ素触媒と可視光照射によるカルボン酸のβ位アリル化反応の機械学習を検討した。すでに34個のBINOL型配位子を用いた実験結果をトレーニングデータとしてモデル構築を検討していたが、未知配位子を使用した際の収率予測には適用不可であった。そこで、トレーニングデータを増やすため、新たに数種のBINOL型配位子を合成し、実験結果を追加した。また、neural networkによる新たなモデル構築も行い、ここから収率向上が見込まれる新規BINOL型配位子を選んで合成した。残念ながら期待されたほどの収率向上は見られなかったが、検討した配位子の中では良好な収率を与える配位子に分類された。収率を高める配位子の要因は、大まかにとらえられているものと考えられる。ベイズ最適化も利用してより効率的にトレーニングデータを拡充することで収率の向上につながるモデルを構築できる可能性があると考えている。 β位修飾反応の検討を行う中で、マイケル反応のドナーとアクセプターの両方にカルボン酸を用いることが出来るホウ素触媒系を見出した。カルボン酸をマイケル反応に用いた前例は少なく、今回のようにドナーとアクセプターの両方に用いる例はこれまで全く報告がなかったものである。ホウ素触媒とカルボン酸で可逆的なB-O共有結合を形成することでドナーカルボン酸からのエノラート形成を促進するとともに、α,β-不飽和カルボン酸の求電子性を高めることが重要である。触媒条件の最適化を進めており、条件が定まり次第論文として取りまとめる予定である。
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