• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

アルケニルホスホニウム塩を鍵中間体とする官能基化アルケンの統一的合成

公募研究

研究領域デジタル化による高度精密有機合成の新展開
研究課題/領域番号 22H05331
研究機関北海道大学

研究代表者

増田 侑亮  北海道大学, 理学研究院, 助教 (20822307)

研究期間 (年度) 2022-06-16 – 2024-03-31
キーワードアルケン / 自動合成 / 光酸化還元触媒 / ホスホニウム / Wittig反応 / データサイエンス / 機械学習
研究実績の概要

研究計画に従い、まずはビニルホスホニウム塩を用いた有機分子の炭素ー水素結合アルキル化反応の開発を行った。その結果、アルコールおよびアミンのα位炭素ー水素結合のホスホニオアルキル化反応が光酸化還元触媒の存在下で効率よく進行することを見出した。この反応は続くWittig反応と組み合わせることで、ホモアリルアルコールおよびホモアリルアミンの効率的合成プロトコルとなることもわかった。同時に、本反応を官能基評価キットによって評価し、反応データを収集することで、領域のデータベース構築に貢献した。また、研究目標であるアルケンの自動合成の達成に向けて、この光反応がフロー合成に適用可能であることも確かめた。他のビニルホスホニウムの反応として、不飽和カルボニル化合物の共存による2重付加反応の開発にも着手している。2種類の電子不足アルケンに対して連続的かつ選択的に付加反応を行うことは従来の合成手法では困難であったが、本反応ではビニルホスホニウムの特異なカチオン性によって配列選択的に反応が進行することがわかっており、引き続き検討を行う予定である。これらの反応はアルケニルホスホニウム塩の使用で、従来の選択性・反応性を変革した例であり、領域の研究目的に合致した研究成果であると考えている。引き続き、アルケニルホスホニウムを鍵とする反応開発を進めるとともに、機械学習やデータサイエンスを利用して、これらの反応をモジュールとするアルケンの自動合成へと展開する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画どおり、ビニルホスホニウムを鍵中間体とする反応の開発を行った。すでに光反応とWittig反応を組み合わせたホモアリルアルコールの合成プロトコルを確立し、学術論文として発表した。原料をアルコールからアミン、エーテル、アルデヒドなどに変えても反応が進行することを確かめており、多様なアルケンの合成プロトコルとして利用できると考えている。さらに光によるアルコールα位のアルキル化反応はフロー合成に適用可能であることも確かめており、連続フロー反応によるアルケン合成への足がかりを作った。以上の結果は、2カ年の研究計画の達成度として50%程度に達していると判断し、初年度の研究進捗としては概ね順調に進展しているとした。また、不飽和カルボニル化合物とビニルホスホニウムへの連続付加反応は、当初の予想を超えた結果であり、次年度も引き続き検討を続ける予定である。

今後の研究の推進方策

今後は「ビニルホスホニウムを鍵とするアルケン合成法の開発」および「アルケンの自動合成への展開」の2つを軸に研究を推進する計画である。すでに、新たな反応としてビニルホスホニウムを用いたアルデヒド炭素ー水素結合の変換反応および配列選択的2重付加反応の開発に成功しており、これらの反応を続くWittig反応と組み合わせることで、本プロトコルによって合成可能なアルケンの種類を拡張する予定である。またビニルホスホニウムに塩基を作用することで、リン上置換基の転位が進行することもわかっており、置換様式の異なるアルケン合成プロトコルについても検討を行っていく。次に、開発したビニルホスホニウムを鍵とするアルケン合成法について、それぞれのフロー化を行う。すでに光反応のフロー化には成功しているため、続くWittig反応との連続反応を検討する。連続反応では反応条件がより多様となることから、温度・時間・当量関係などの数値化可能なパラメータをもとに機械学習を用いたパラレル最適化を行うことで、効率的に反応条件の検討を行っていく。同時に基質毎の反応条件をデータとして蓄積することで、新たな反応基質に対してはより効率的に最適条件を割り出すことができると考えている。ビニルホスホニウムを鍵とするアルケン合成においてフロー合成化と基質範囲の拡大が実現できれば、望みのアルケンを自動合成するシステムの構築に向けて検討を開始する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Synthesis of Tetraarylphosphonium Salts from Triarylphosphines and Aryl Bromides Exploiting Light and Palladium2022

    • 著者名/発表者名
      Ikeshita Daichi、Shimura Hiroki、Miyakawa Sho、Masuda Yusuke、Ishida Naoki、Murakami Masahiro
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 51 ページ: 522~524

    • DOI

      10.1246/cl.220067

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photoinduced Alcoholic α-C-H Bond Anti-Markovnikov Addition to Vinylphosphonium Bromides Followed by Wittig Olefination: Two-Step Protocol for α-C-H Allylic Alkylation of Alcohols2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Masaki、Sawamura Masaya、Masuda Yusuke
    • 雑誌名

      ChemCatChem

      巻: 14 ページ: e202200744

    • DOI

      10.1002/cctc.202200744

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nickel-Catalyzed Defluorophosphonylation of Aryl Fluorides2022

    • 著者名/発表者名
      You Zhensheng、Masuda Yusuke、Iwai Tomohiro、Higashida Kosuke、Sawamura Masaya
    • 雑誌名

      The Journal of Organic Chemistry

      巻: 87 ページ: 14731~14737

    • DOI

      10.1021/acs.joc.2c02048

    • 査読あり
  • [学会発表] 電荷によって制御された電子不足アルケンへの二重ラジカル付加反応2023

    • 著者名/発表者名
      増田 侑亮、吉田 真樹、澤村 正也
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会(2023)
  • [学会発表] アシルシランの光銅触媒不斉共役付加によるキラル1,4-ジカルボニル化合物の合成2023

    • 著者名/発表者名
      上田 悠介、末木 愛子、増田 侑亮、澤村 正也
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会(2023)
  • [学会発表] ビアリールホスフィンの光触媒環化反応によるジベンゾホスホールの合成2023

    • 著者名/発表者名
      河村 幸江、増田 侑亮、澤村 正也
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会(2023)
  • [学会発表] 光酸化還元触媒によるアルデヒド炭素―水素結合の臭化ビニルホスホニウムへのanti-マルコフニコフ付加反応2023

    • 著者名/発表者名
      森 晴菜、吉田 真樹、増田 侑亮、澤村 正也
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会(2023)
  • [学会発表] 光酸化還元触媒によるアルコールα位炭素ー水素結合の臭化ビニルホスホニウムへの anti-マルコフニコフ付加反応の開発2022

    • 著者名/発表者名
      吉田 真樹、増田 侑亮、澤村 正也
    • 学会等名
      第20回次世代を担う有機化学シンポジウム
  • [学会発表] Photocatalytic Synthesis of Organophosphorus Compounds2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Masuda
    • 学会等名
      The 15th International Conference on Cutting-Edge Organic Chemistry in Asia (ICCEOCA-15)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Photoinduced Copper-Catalyzed Asymmetric Acylation of Allylic Phosphates with Acylsilanes2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Ueda, Yusuke Masuda, Tomohiro Iwai, Keisuke Imaeda, Hiroki Takeuchi, Kosei Ueno, Min Gao, Jun-ya Hasegawa, Masaya Sawamura
    • 学会等名
      第68回有機金属化学討論会
  • [学会発表] Ni-Catalyzed Defluorophosphonylation of Aryl Fluorides2022

    • 著者名/発表者名
      Zhensheng You, Yusuke Masuda, Tomohiro Iwai, Kosuke Higashida, Masaya Sawamura
    • 学会等名
      第68回有機金属化学討論会
  • [学会発表] ビニルホスホニウム塩の光酸化還元反応による多様性指向型分子変換2022

    • 著者名/発表者名
      増田 侑亮、吉田 真樹、澤村 正也
    • 学会等名
      第 49 回 有機典型元素化学討論会
  • [産業財産権] 第4級ホスホニウム化合物の製造方法2023

    • 発明者名
      増田侑亮、吉田真樹、澤村正也
    • 権利者名
      国立大学法人北海道大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2023-002615

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi