研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05345
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 由樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70835298)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | フロー反応 / 不均一系触媒 / 不斉反応 |
研究実績の概要 |
本研究は不均一系触媒特有の反応場を活用し、フロー反応に適用可能なキラル不均一系触媒の開発を行うことを目的とする。不均一系触媒として、アミン修飾メソポーラスシリカ・ヘテロポリ酸複合体を設計し、触媒活性種近傍に存在するヘテロポリ酸・アミン部位の構造、物質輸送に関与するメソポーラスシリカの構造をチューニングすることで、触媒の高機能化が可能となると考えた。 まず、モデル反応として、カチオン性ロジウム(I)触媒による不斉ヒドロアシル化反応の開発に取り組んだ。想定通り、担体構造が触媒活性・耐久性に大きく影響を与え、検討の結果アミン部位としてヘテロ芳香環を有する触媒において、高活性・高選択性・高耐久性を両立する触媒の開発に成功した。本触媒は幅広い基質一般性を有しているだけでなく、配位子構造の変更により分子内反応・分子間反応のいずれの反応にも適用が可能であった。また、本反応を鍵反応とする連結フロー反応での高付加価値化合物の連続合成も達成した。 また、同様のカチオン性ロジウム(I)触媒をもちいる不斉1,6-エンイン環化反応の開発も行った。本研究では、単に高性能な不均一触媒の開発に成功したのみならず、種々のフロー反応の実験により、触媒の不活性化のメカニズムも明らかにすることができた。 最後に、カチオン性ロジウム(III)触媒を用いるC-H結合のアミド化反応の開発もおこなった。遷移金属触媒を用いるv反応は現在でもバッチ条件の均一系触媒が盛んに研究されている分野であり、フローでの不均一系触媒反応の開発に成功したことは特筆に値する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、初年度において、ロジウム(I)触媒によるフロー反応開発を行い、次年度においてロジウム(III)触媒によるフロー反応開発を行う計画であったが、ロジウム(I)触媒によるフロー反応開発が順調に進行したため、ロジウム(III)触媒によるフロー反応開発を前倒しで開始し、こちらも3ヶ月後には完成する見込みである。 各触媒開発においても単に高性能な不均一触媒の開発に成功したのみならず、触媒構造の詳細な検討により、担体の構造上重要な部位を特定することができ、触媒設計の指針を確立することができた。また、フロー反応特有の分析である触媒カラムの空間的解析を行い、不活性化部位の特定に成功し、そのメカニズムを明らかにできたことも当初の予想を上回る成果である。 最後に、カチオン性ロジウム(III)触媒を用いるC-H結合のアミド化反応の開発では、C-H結合活性化分野において、フローでの不均一系触媒反応の開発に成功したことは特筆に値する。
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今後の研究の推進方策 |
まずは当初の計画通り、カチオン性ロジウム(III)触媒を用いるC-H結合のアミド化反応を不斉反応へと展開することを目標とする。C-H結合活性化において不斉触媒の例は幾つか報告例があり、配位子であるシクロシクロペンタジエニル部位にキラリティを導入することでキラル不均一系触媒の調製を試みる。本研究が達成されれば、C-H結合活性化において初のキラル不均一系触媒の開発事例となる。 また、当初の計画以上に研究が進呈しているため、ロジウム種以外の他の金属種の固定化も試みる。特にイリジウム、金は特異な触媒活性を有するため、有機合成において重要な触媒種である一方、希少金属であるためその固定化が強く望まれている。そこで、このような幅広い金属種に適用可能な新たな単体として、テトラアリールボレート種の固定化を行い、静電相互作用によるカチオン性金属種の不均一化を試みる。
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