研究実績の概要 |
ロジウム (Rh) は、光駆動型触媒としての利用例が限られている。周期表上で隣り合わせに位置するイリジウム (Ir) やルテニウム (Ru) が光増感剤として膨大な反応に利用されていることとは対照的である。これは、ロジウムが特定の酸化数を取りにくいためであると考えられる。このようなロジウムの性質を逆手に取った新規ロジウム光触媒の開発に取り組んだ。 当該年度では、シクロペンタジエニル配位子に着目し、効率的に光を吸収できる新規ロジウム錯体を理論計算によって設計した。単純な共役系の拡張は錯体の安定性を損ねることが予想されたため、共役系を増やす戦略によって、スピロ部位を有する新規ロジウム錯体 Spiro-fluorene-indenoindenyl (SFI)-Rh(I) を設計した。合成した SFI-Rh(I) 錯体を様々なロジウム触媒反応に適用した結果、「アレーンの C-H ホウ素化反応」や「ジインとアルキンの [2+2+2] 反応」が青色光照射下においてのみ進行することを見出した。実験と理論計算による解析の結果、従来の触媒では反応できない基質が利用可能であることと、律速段階の光励起状態において metal-to-ligand charge transfer (MLCT) が起こることで遷移状態が安定化されることを明らかにした。 本研究成果は、以下の学術雑誌に掲載された。S. Ouchi, T. Inoue, J. Nogami, Y. Nagashima*, K. Tanaka*, Design, synthesis, and visible-light-induced non-radical reactions of dual-functional Rh catalysts. Nature Synth. 2023, 2, ASAP.
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