研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
22H05356
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
納戸 直木 名古屋大学, 学際統合物質科学研究機構, 助教 (20909949)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 光増感剤 / 機械学習 / ニッケル触媒 / 分類 |
研究実績の概要 |
昨年度は主に、特別な配位子を持たない無機ニッケル塩を用いた光触媒的CO結合形成反応(フェノール合成反応)に関する研究に従事した。本研究では、60種類のドナーアクセプター型有機光増感剤を用意して網羅的に触媒活性を調査し、これまでに有効性が見出されていなかった有機光増感剤の優れた性能を見出した。さらに、最適化した触媒システムの基質適用性の調査にも取り組み、本システムが比較的シンプルな構造を有する生物活性分子等の合成にも適用可能であることを示した。一方で、本触媒システムの反応機構には捉えどころのない部分が多く含まれており、より良い光増感剤を開発するために有用な知見を得ることは難しかった。そこで従来のような実験主体の手法に代えて、機械学習を活用して有機光増感剤の触媒活性を予測する手法の開発にも取り組み、これに成功した。 当初の研究計画では、「有機光触媒の反応性予測、反応機構解明に利用可能な機械学習法の開発」を初年度の目標としており、開発した手法は依然として改良は必要ではあるものの、この目標を達成したというに値するものであると考えている。上記の内容に関する論文は査読付きの国際学術誌への投稿が完了しており(Angew. Chem. Int. Ed. 2023, 62, e202219107.)、現在では「開発した機械学習モデルを活用した新規高活性有機光触媒の開発」という次なる目標の達成に向けてその準備に取りかかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の研究では、特別な配位子を持たない無機ニッケル塩と有機光増感剤を用いたBuchwald反応型のフェノール合成法を見出し、さらに本反応における有機光増感剤の反応性を予測する機械学習モデルを開発することにも成功した。当該研究は化学誌として権威のあるAngewandte Chemie誌に掲載されており、世界的にも一定の評価を受けるに値する研究であることが示された。 また上記の事柄だけであれば「計画の範囲内」という見方もできるが、申請者はこの研究を元手に公募班として参加するデジタル有機合成のコミュニティにおいて複数の共同研究テーマを作り出すなど、今後の更なる飛躍にもつながりうる活動を展開しており、昨年度は当初の計画以上の進展があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り申請者はこれまでに、特別な配位子を用いないニッケル塩と有機光触媒を利用したフェノール合成法を開発しており、本反応における60種類の有機光増感剤の反応性を予測する機械学習モデルの開発に成功している。また最近では、有機光触媒を現在の 60種類から100種類にまで増やすことにも成功している。本年度はまず、この拡張した光増感剤ライブラリーを用いて光反応ライブラリーの拡張にも取り組むことで、データベースの増強を行う。さらに今後は、共同研究にもより力を入れる予定である。例えば、現在よりも踏み込んだ励起状態計算を行うことで、より効果的な記述子の設計を進めている。加えて、有機光増感剤の仮想スクリーニングに用いる触媒候補化合物の大規模ライブラリーの開発にも挑戦しており、当該分野の短期的ゴールの一つである「AIによる触媒設計法の確立」にも挑戦する予定である。
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