研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
22H05389
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊川 峰志 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (20281842)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
|
キーワード | 膜輸送 / イオンポンプ / 微生物ロドプシン / 多剤排出蛋白質 |
研究実績の概要 |
リポソームの脂質膜上に「光で駆動されるタンパク質」と「有害な溶質を膜輸送するタンパク質」を組込む。前者には、細胞内からH+やNa+を外向きに輸送する微生物ロドプシンを、後者には、H+やNa+の濃度勾配を消費して、毒物を排出する多剤排出タンパク質を用いる。これらを細胞膜中とは逆向きにリポソームに組込むことで、太陽光をネルギー源としながら、環境中の毒物をリポソーム内へ効率良く回収する自己完結的なシステムの構築を目指している。本年度は以下の結果を得た。 1) 多剤排出タンパク質(MDT)の発現・精製系の確立 MDTは複数のグループに大別でき、グループごとにサイズやサブユニット構成が大きく異なる。いずれも調製が難しいことが知られているが、組換え発現させたときの発現量などを相互比較した情報はなかった。そのため、種々のメンバーの発現系構築、及び、ロドプシンとの融合発現系構築を行い、様々な発現条件における精製量を比較した。その結果、単独で発現させたMATE型が、最も高純度・高収量で調製できることが分かった。MATE型は、ロドプシンとの融合タンパク質としても発現できたが、MATE型の毒物輸送活性が減弱した。よって、リポソーム構築には単独発現のMATE型が適していると結論した。 2)リポソーム再構成手法の検討 ロドプシンとMDTの機能維持に最適な界面活性剤は、いずれもDDMであるが、DDMは除去が難しく、リポソームへの再構成には適さない。そこで、大量に調製できるNa+ポンプロドプシンを試料として、種々の界面活性剤とその除去法、及び、脂質種類の組み合わせをテストし、最適な再構成手法を検討した。その結果、ロドプシンを極微少量のDDMで可溶化しておき、それをコール酸で完全に可溶化した大腸菌脂質と混合させ、その後、透析を行った場合に、最も強いNa+輸送を起こせることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のMDTの発現系構築と発現条件の検討、および、リポソーム再構成手法の検討を十分に行い、機能的なリポソーム構築に必要な要素を揃えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の核心である「光で駆動されるリポソームの構築」へ研究を進める。MATE型の収量が少ないことが懸念点であるので、宿主の変更など、発現条件の検討も同時に進めたい。また、1)リポソーム内部に触媒を封入させる、2)輸送基質に特徴があるMDTを使用する、3)ロドプシンとMDTを会合させるなど、リポソームの機能を高度化させるアィディアを幾つか持っており、それらを実行に移せるように、研究を進展させたい。
|