公募研究
リポソームの脂質膜上に、「光で駆動されるタンパク質」と「有害な溶質を膜輸送するタンパク質」の共役系構築を試みた。前者には、細胞内からH+やNa+を外向きに輸送する微生物ロドプシンを、後者には、H+やNa+の濃度勾配を消費して、有機毒物を排出する多剤排出タンパク質を用いた。これらを細胞膜中とは逆向きにリポソームに組込むことで、太陽光をネルギー源としながら、環境中の有機毒物をリポソーム内へ効率良く回収する自己完結的なシステムの構築を目指した。本年度は、複数の多剤排出蛋白質の大腸菌での発現系を構築し、大腸菌における有機物質輸送活性と、大腸菌細胞膜からの精製収量を指標に、V. choleraeのNorM_VCを微生物ロドプシンと共役させる蛋白質として決定した。微生物ロドプシンには、H+ポンプ型のバクテリオロドプシン(BR)を採用し、リポソームのプロトタイプを作製した。NorMの基質には、Tetraphenyl phosphonium(TPP+)を用いて、その輸送をTPP+選択膜を用いて検出した。TPP+選択膜は、TPP+を透過させる薄膜である。この膜で二つの溶液を仕切ると、それぞれのTPP+濃度の比に応じたネルンスト電位が溶液間に発生する。一方の溶液を、BRとNorMを同時に再構成したリポソーム懸濁液とし、光照射によってBRを活性化させたところ、TPP+濃度の減少に対応する膜電位の上昇が観測された。BRのみを再構成したリポソームでは膜電位変化が観測されなかった。よって、両者を再構成した場合には、光をエネルギー源として、TPP+のリポソーム内への濃縮を起こせることがわかった。膜電位の変化量から、リポソーム内部には、外部溶液に比べて、TPP+を2.4倍濃縮できることがわかった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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