研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
22H05392
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
西山 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (80291334)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質膜挿入 / タンパク質膜透過 / 糖脂質 / MPIase |
研究実績の概要 |
膜タンパク質は多くの生命活動のプログラムに必須の役割を果たしているうえ、市販の薬剤の半数以上は膜タンパク質を標的にしたものである。そのため、汎用的セル・フリー膜タンパク質合成システムが開発できれば、膜タンパク質の構造や機能に関する理解が進み、新規薬剤開発も容易になる。我々は、細胞における反応を忠実に再現したタンパク質膜挿入の再構成系を構築し、膜挿入に必須の糖脂質MPIaseを同定した。さらに、生体膜に化学物質に対する耐性度や物理的強度を与える糖脂質BPFも同定し、BPFがMPIaseに類似した構造をもつことを示した。MPIaseの構造と機能の関係を明らかにするため、MPIaseの部分化学合成標品mini-MPIaseやその誘導体を調製し、これらが膜挿入活性や膜保護活性を有していることを明らかにした。 社会実装可能で汎用的な膜挿入システムの構築のため、本年度は、糖鎖ユニットの繰り返しが2個と3個の化学合成mini-MPIase標品を調製し、膜挿入活性を測定した。その結果、糖鎖長が2個、3個と伸びるにつれ膜挿入活性が上昇することが判明した。さらに、YidCとの協働作用は繰り返しが2個、3個と伸びるにつれ顕著となった。また、MPIaseがもつ特徴的な官能基を修飾した変異型mini-MPIaseを調製し、膜挿入活性や膜保護活性を調べた。その結果、ピロリン酸は基質膜タンパク質の可溶化に必須であること、GlcNAcのアセチル基は膜挿入に重要である一方、膜保護活性には阻害的に作用することが判明した。 再構成膜挿入システムが真核生物の膜タンパク質にも適用できることを示すため、ラット小胞体タンパク質Cytochrome b5、酵母ミトコンドリア外膜タンパク質Tom5、植物チラコイドタンパク質PspWの膜挿入活性を調べたところ、これらはMPIaseに依存して膜挿入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度中に大腸菌内膜BPFの論文報告を予定していたが、大腸菌外膜にも異なるBPFが存在することが明らかになったため、両BPFについてまとめて論文報告することに方針変更し、報告が遅れたものの、その他の計画については順調に進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
BPFの論文発表を急ぎ、汎用的で社会実装可能な膜挿入システムの開発について計画通り進める。
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