研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
22H05432
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20580989)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 合成生物学 / 人工細胞 / 醗酵生産 / C1代謝 / 無細胞転写翻訳系 |
研究実績の概要 |
これまで報告されている高度化された酵素法、合成生物学と酵素法を融合した手法(全細胞触媒法)、人工細胞工学の研究などを加味すると、人工細胞を用いた発酵生産を社会での活用可能なレベルに押し上げるためには少なくとも(1)作製コスト、(2)複雑な酵素反応の実現、(3)機能モジュール化による組み合わせ手法の確立、という3つの課題を克服する必要がある。そこで本研究では、この3つの課題を足掛かりに、社会活用レベルでの人工細胞醗酵法の確立を実現するボトムアップ構築原理は何か?という学術的な問いをボトムアップ構築原理の学理へと転換し、微生物による発酵生産を超越した応用可能・社会実装に資する分子システムをボトムアップ構築することを目的としている。 (1)において、人工細胞の作製コストを下げるために、細胞質成分のゲル化や、作製方法や材料を検討したが現在のところ少しの改善は見られたものの、大幅な改善はみられていない。脂質でなく、より広い両親媒性化合物に広げて検討を進める必要が示唆された。(2)社会貢献に資する人工細胞を作製するため、内包する代謝経路に関して検討を行った。メタノールやホルムアルデヒドからアセチルCoAやエタノールを合成可能なMCC経路に着目し、大腸菌でリコンビナント発現した9つの酵素を精製した。各酵素の活性を確認した後、経路がアセチルCoAを合成可能なことを確認した。そこで人工細胞内でもMCC経路が動くことを示すため、ATPと酢酸を最終産物とするよう代謝経路を設定し、合成されたATPを蛍光ATP濃度センサーで定量した。結果、MCC回路を担う酵素とホルムアルデヒド依存的に人工細胞内でATPが合成可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように(1)作製コスト、(2)複雑な酵素反応の実現、(3)機能モジュール化による組み合わせ手法の確立を目指して研究を行っているが、(2)に関してはMCC経路のような複雑な経路を人工細胞内で動かせるようになった。(1)は今後、脂質でなく、より広い両親媒性化合物に広げて検討を進める必要がある。(3)は2023年度の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)を達成するために、人工細胞の材料と作製方法を引き続き検討する。(2)に関してはCETCH回路のような二酸化炭素も固定可能な系に広げることを検討する。(3)に関しては、多糖分解系と解糖系と転写翻訳系のモジュール化を試み、人工細胞同士のコミュニケーションや人工オルガネラのような区画化としての機能を追求する。
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