公募研究
(1) 硫化ガリウムGaSをバッファ層、二硫化モリブデンMoS2等の遷移金属ダイカルコゲナイドをチャネル層とする電界効果トランジスタ(FET)作製については、剥離転写技術の習熟を進め、実際に動作するFET素子の作製に成功している。まだ試料作製の歩留まりは悪いものの、GaSのバッファ層としての有効性を示すような測定結果も得られている。(2) 試料温度を変えてのFET動作特性の測定については、GM冷凍機とプローバーを合体させた温度可変プローバー装置を立ち上げ、10 k程度まで試料を冷却した状態でトランジスタ特性を測定できるようにした。室温測定用プローバーに加えてこの装置も用い、GaSバッファ層の効果の有無を検証している。(3) GaSバルク単結晶の形成については、当初は横型管状電気炉を購入して化学蒸気輸送法による結晶成長を先に行うことを予定していたが、別予算での電気炉導入が決まったため、令和4年度はブリッジマン成長用縦型管状電気炉と、成長アンプル上下機構の導入を優先した。納期がかなり遅れたものの、年度末近くに装置が完成し、現在GaSバルク単結晶の成長実験を進めている。管状炉の温度特性や、成長アンプル上下機構の動作は十分満足できるものであり、大型の13-16族層状化合物単結晶成長が期待できる。(4) 本研究予算により購入した石英アンプルを用いて、様々な種類の層状化合物(遷移金属ダイカルコゲナイド、13-16族層状化合物、14-16族層状化合物、等)の単結晶を化学蒸気輸送法により成長した。得られた単結晶試料は自身の実験で使用する他に、本学術変革領域研究に属する多くのメンバーに無償提供し、共同研究を幅広く推進している。
3: やや遅れている
まず、長引くコロナウイルス流行およびウクライナ紛争のあおりで、様々な研究機器、半導体部品の値上がりと納期遅延が起こっており、そのため導入を予定していた実験機器(本年度はブリッジマン成長用縦型電気炉とその駆動装置、プローバ用部品、等)の納品が大幅に遅れた(いずれも年度末までには駆動)。そのため、特に大型GaS単結晶の成長実験が次年度に持ち越しとなってしまっている。次に剥離転写法による電界効果トランジスタ作製の実験についても、技術の習熟に時間を要している。本来なら早い時期に計画班G(長汐G、町田Gなど)を訪問して共同研究を進め、剥離転写技術を習得したかったが、夏場過ぎまでのオミクロン株流行のあおりで、こちらも遅れている。
(1) 硫化ガリウムGaSのバッファ層応用可能性検証。この項目では、GaSが実際にバッファ層として利用可能かどうかを、半導体遷移金属ダイカルコゲナイド(MoS2, MoSe2, 2H-MoTe2, WS2, WSe2)やSnS2, InSeをチャネル層とする電界効果トランジスタ(FET)を作製して検証する。既にGaSをバッファ層、MoS2をチャネル層とするFET素子の試作を行い、室温で動作を確認しているが、今後は令和4年度に導入した低温プローバーを用いて低温での測定を進め、電荷不純物や基板の格子振動がFETのキャリア移動に与える影響を見極める実験を行う。FET形成に必要な層状物質の剥離転写については、必要に応じて計画研究グループ(長汐G、町田G)に技術協力を仰ぎ、より確かな素子形成を進める。また、バッファ層としての特性を理論的に検証するため、第一原理計算による研究も進める。さらに、GaS単結晶試料を領域内の他メンバーにも提供し、様々な応用可能性について共同研究を推進する。(2) GaS大型単結晶からの大面積GaS原子膜の剥離転写。令和4年度に導入したブリッジマン成長用縦型管状電気炉を用いて、大型GaS単結晶の成長条件を追求する。さらに得られた大型単結晶から、より広い面積の極薄GaS原子膜を剥離転写する手法の開発を進める。(3) バッファ層応用可能な他の層状物質の探究。GaSeはバンドギャップがGaSよりも狭いが、これまでの実験ではGaSと同様にFETのチャネルとして用いてもドレイン電流があまり流れないことが判っている。このGaSe、およびGaTeについてもブリッジマン法により単結晶を作製し、バッファ層として利用可能かどうか検証する。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件) 学会発表 (9件) 備考 (2件)
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