研究領域 | 2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト |
研究課題/領域番号 |
22H05447
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田代 省平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80420230)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 環状中空分子 / 二次元集積化 / 2.5次元ナノ空間 / 分子認識 / 結晶材料 |
研究実績の概要 |
先に我々が開発した非対称大環状化合物ベンズイミダゾール[3]アレーン(Chem. Sci. 2018, 9, 7614)と銀塩を反応させることにより、層内・層間に複数の分子認識サイトを備えた二次元MOFが形成する。この二次元MOFの単結晶に対してさまざまなゲスト分子を導入して単結晶X線回折測定を行ったところ、溶媒分子や小分子などの他に、テルペンなどの天然有機化合物や、フェロセン、テトラチアフルバレン(TTF)などの電子ドナー性化合物が効果的に配列することが明らかになった。例えば極性官能基を持つ天然有機化合物などは、細孔壁面との水素結合を介して細孔内に位置選択的に配列する。一方で、極性官能基を持たないゲスト分子でも、層内・層間に存在する複数の分子認識ポケットに捕捉されることが構造解析より明らかとなった。結晶内へのこれらのゲスト分子の取り込みは、結晶溶解後のNMR測定や、拡散反射UV-visスペクトルなどからも支持された。また、二次元MOFにTTFを配列させた場合では、結晶色などからTTFが一部酸化されることが示されたことから、ESR測定やラマン分光測定などについても検討を行った。加えて、TTFと同時に酸化剤であるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)も同時に細孔内に導入することを検討したところ、TCNQの配列構造は観測されなかったが、包接されたTTFが有意に酸化されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に開発した2D-MOFの特異な層状構造と、その層内・層間における優れた分子配列能を単結晶X線回折測定から明らかにするとともに、結晶内でのゲスト分子の酸化挙動についても様々な情報を得ることができたことから、計画に対して概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、独自に開発した2D-MOFの分子配列能についてさらに検討を進めてその特徴を明らかにするとともに、配列したゲスト分子の酸化還元反応を制御することを目指す。また、複数のゲスト分子を同時に配列化することで、ゲスト分子の二次元配列様式を高度に制御することも試みる。加えて、本2D-MOFを含む多孔性結晶の剥離条件を確立して、グラフェンなどの二次元物質と組み合わせることにより、新たな複合材料の開発を目指す。
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