本研究では、超高真空中で2.5次元物質を作製して、大気に暴露することなく走査プローブ顕微鏡によって異種元素の自在配列と物性評価を行う。これまで、走査プローブ顕微鏡によって、固体表面において、個々の原子を元素同定して、原子操作によって異種元素を自由に配列させる研究を行ってきた。走査プローブ顕微鏡とは、鋭い針を試料表面上でスキャンさせて、針先端の1つの原子と、表面の個々の原子との間の原子間力や電流などを計測して、個々の原子をイメージングする顕微鏡である。走査プローブ顕微鏡の中でも絶縁体も観察できる原子間力顕微鏡(AFM)を主軸に研究を行ってきた。また、AFMと走査トンネル顕微鏡(STM)が複合化した低温装置も稼働しており、多様な2.5次元物質の分析を行ってきた。 シリセンをベースとした系もAFM/STMによって局所分析した。具体的には、シリセンの上に原子を吸着させた系を創製して、評価を行った。超高真空中でシリセンを合成して、その上に同族の原子を室温で蒸着して、この2.5次元物質を作製した。第一原理計算と組み合わせることによって、原子の吸着サイトを決定した。シリセンの上に原子を吸着させるとシリセン自体のバックリングの構造が変化することが明らかになった。また、吸着させた原子を原子操作し、原子配列がデザインできることを実証した。これらの実験により、シリセンの構造を局所的に変化させて、面内の電子状態を変調する道が切り拓かれた。
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