高機能かつ安価な触媒開発において、2.5次元の概念を志向した触媒開発は不可欠である。特にエッジや歪み、担持体との相互作用を非常に効果的に活用するうえで、触媒活性サイトの可視化は非常に重要な課題である。電気化学イメージング技術として、マイクロ電極を走査型プローブ顕微鏡の探針に用いて、溶液中で電気化学反応を直接とらえる走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いた計測が行われたが、空間分解能が数十マイクロメートルであり、2次元材料のエッジとテラスの反応性を切り分けるのに十分な分解能を有していないという課題があった。そこで、電気化学セルそのものを小さくするという発想で、ナノピペットを用いた新しい電気化学イメージング技術である走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)を開発した。SECCMでは、電解液を充填したナノスケールのガラスピペットを用いて、ナノピペット先端と試料に近接させて液滴状の電気化学セルを形成する。この電気化学セルをナノスケールの反応場として利用することで電気化学計測を行う。ナノピペットを走査しながらこの計測行うことで、試料表面の電気化学活性を、電流や電位の電気化学イメージとして可視化する。 本研究では、ヤヌスナノスクロールや、MoS2ナノリボンなど、構造と触媒能が密接に関与するサンプルに関して、ナノ構造と触媒活性の関係をSECCMにより評価した。その結果、ヤヌスナノスクロールについては、端で高い水素発生反応(HER)の触媒活性を示すことが明らかとなった。同様にMoS2ナノリボンについてもエッジ部分で高いHER活性を示すことを明らかとした。
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