研究領域 | 2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト |
研究課題/領域番号 |
22H05462
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 秀和 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80294130)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 遷移金属酸化物 / 2次元層状物質 / CVD-六方晶窒化ホウ素薄膜 / 酸化バナジウム / 酸化鉄(マグネタイト) / 金属-絶縁体相転移 / ファンデルワールス表面 |
研究実績の概要 |
金属-絶縁体相転移、強磁性、水素誘起電子相変化を示す遷移金属酸化物群を、化学気相成長法で成長させた大面積2次元層状物質薄膜表面上で、酸化物の結晶構造・格子定数によらずに統一的に良質な結晶成長が可能であり、高機能を引き出せることを実証し、異種機能集積デバイスデモンストレーションを行う。CVD成長による大面積2次元物質薄膜(特にh-BN薄膜)上に、結晶構造の様々に異なる遷移金属酸化物の薄膜結晶を成長させ多角的な構造・物性測定によりイオン・共有結合性物質とファンデルワールス表面間の積層の学術を構築することをめざす。 特に今年度は、九州大学:吾郷グループより供給されたCVD成長h-BN薄膜上に、パルスレーザ蒸着法により金属-相転移を示すVO2に取り組んだ。 数mm級の大面積CVDh-BN薄膜の特徴を生かし、その上に作成したVO2/hBN積層膜のX線回折測定に成功し、VO2が優先配向結晶成長していることを見出した。微小領域のみでの結晶化の観察であったが、本手法により簡便に構造解析が行える様になった。電気伝導計測を行い、CVD-hBNに存在する多結晶粒界を跨いでも良好な金属-絶縁体現象が発現することを確認し、大面積酸化物エレクトロニクスへの道筋をつけることができた。またVO2に加えて、強磁性相転移を示すFe3O4薄膜結晶成長にも成功し、同様にX線回折による結晶化の同定およびマイクロパターン電極による良好な電気伝導特性の確認にも成功した。併せてNIMS:渡邊グループと単結晶hBNフレークを用いた共同研究も遂行し、スイッチグデバイス展開に向け、電流-電圧特性(I-V特性)においては、電圧上昇に伴い、急峻な階段状の電流上昇が観測し、金属ドメインを活用したドメインエンジニアリングに資する成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画であるCVD-hBN薄膜へのVO2、Fe3O4の薄膜結晶の成長と、大面積CVD-hBN薄膜ならではの特徴を活かした多角的な構造・物性測定(ラマン分光測定、X線構造解析、マイクロリソグラフィーパターンなどによる電気輸送特性評価)の達成に加え、VO2/CVD-hBN積層試料の剥離・トランスファーにも成功したため。この成果による試料を透過型電子顕微鏡観察に適用することにより、従来の断面格子・原子像観察に加え、plane view観察に成功した。この知見は酸化物・2次元材料の界面構造の理解促進に重要な寄与をなす成果であると判断・期待される。
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今後の研究の推進方策 |
大面積薄膜を利用した多元的構造評価を推進する。特に前年度に見出した、VO2/CVD-hBN積層試料による試料を透過型電子顕微鏡観察に適用することによるplane view観察の成果に基づき酸化物・2次元材料の界面構造(エピタキシャル関係)を明らかにする。其上で、神戸大:小野グループと領域内共同研究による、第一原理計算による界面構造・電子状態のシミュレーションを遂行する。特に密度汎関数法に基づく第一原理計算により、VO2とhBNの界面モデルについて、特に酸化物側第一層とhBN側第一層での原子配列と界面電荷分布の解析により結合様式を明らかにする。界面格子像の観察と計算結果を併せ、作業仮説を検証し、ファンデルワールス表面上への共有・イオン結晶のヘテロ結晶成長の概念を確立する。その上でFe3O4やSmNiO3などの多物質系にも適用し、一般的な酸化物/2次元物質間ヘテロ接合の形成の学理の構築を目指す。加えて2次元層状物質は容易に転写が可能であり、その薄さによりフレキシブルに変形可能である。酸化物材料は圧力印加やpH・ガスで電気抵抗が大きく変わることが知られている。様々な下地材料へ移送した状態でも良好な物性を示しうるならば歪みセンサー、呼気センサーなどへ適用し2次元層状物質/遷移金属酸化物ヘテロ機能集積材料としてのデモンストレレーションを行う。
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