研究領域 | 神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム |
研究課題/領域番号 |
22H05486
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
喜田 聡 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80301547)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 再固定化 / 消去 / 前頭前野 / 扁桃体 / 恐怖記憶 / 記憶エングラム / 光遺伝学 / 回路遷移 |
研究実績の概要 |
扁桃体の記憶エングラムの分子動態と比較しつつ、前頭前野の記憶エングラムニューロンの機能的変化による「再固定化」、「再固定化から消去への移行」と「消去」の制御機構を解明することを試みた。本年度は、c-fosプロモーターによりテトラサイクリン依存性転写因子tTAを発現させるマウスに、tTA依存性プロモーター制御下で光応答チャネルを発現するアデノウイルスを各脳領域に感染させて恐怖記憶エングラムニューロンと消去記憶エングラムニューロンをそれぞれChr2あるいはArcTでラベルし(c-fos-tagシステム)、これらエングラムニューロンの機能を解析した。扁桃体では、恐怖記憶エングラムを活性化した場合には、恐怖反応が増強され、一方、消去記憶エングラムを活性化した場合には恐怖反応が減弱した。そこで、扁桃体には恐怖記憶エングラム細胞と消去記憶エングラムの両方が存在することが示唆された。特に重要な点として、恐怖記憶エングラム細胞をラベルして、消去学習後に活性化させても恐怖反応の増強が観察されたため、扁桃体の恐怖記憶エングラム細胞は機能変容を示さないことが強く示唆された。前頭前野の恐怖記憶エングラムニューロンから扁桃体ニューロンへの回路構造(シナプス形成)の解析を実施する端緒として、Cre-recombinase(Cre)を発現する逆行性ウイルスを扁桃体に感染させて、前頭前野においてCreの活性が観察されることを確認した。さらに、脳搭載型顕微鏡を用いて、前頭前野における興奮性ニューロンのCa2+ライブイメージング手法を確立した。エングラムニューロンのRNA-Seq解析を実施するため、cfos-tagシステムによりH2B-GFP(ヒストンH2BとGFPの融合タンパク質)で前頭前野の恐怖記憶エングラムニューロンと消去記憶エングラムニューロンをラベルする条件を設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GFPによってラベルされたニューロン集団を収集する方法の開発が遅れたので、研究経費の繰越を行った。その分、研究が遅れたので、このように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に継続して、エングラムニューロン分子動態解析として、 前頭前野、扁桃体を対象にcfos-tagシステムによりGFPでラベルされた恐怖記憶制御エングラムニューロンのそれぞれの記憶フェーズにおけるRNA-seq解析を実施する。また、エングラム回路の構造を解析するために、小林和人福島医大教授が開発したCre-recombinase(Cre)を発現する逆行性ウイルスを用いて行動レベルで投射経路を解析する。さらに、エングラム細胞間のシナプスを可視化するeGRASP法を用いて、再固定化時と消去時に形成されるエングラムシナプスを検出する。Ca2+ライブイメージングとして、AAVを用いてGCaMP6fを発現させた興奮性ニューロンの活動を脳搭載型蛍光顕微鏡による解析を実施する。
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