研究領域 | 神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム |
研究課題/領域番号 |
22H05511
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
坪 泰宏 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (40384721)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 神経回路 / ヘテロジニティ / 大規模神経活動データ / スパイク統計 |
研究実績の概要 |
適応脳機能を担う脳神経回路から,その要素回路と要素ダイナミクスをあぶりだすことを目的とした本研究領域において,本研究では,高集積電極によって得られた大規模神経スパイクデータに対し相関解析を適用することで神経回路を同定し.ヘテロジニアスな機能的固有特性をもつ神経細胞が神経回路上でどのように配置されるかを明らかにし,そのネットワークから生成される適応脳機能に関わる要素ダイナミクスを明らかにすることを目的とする. 2022年度は,まず,大規模神経スパイクデータから静的に複雑ネットワーク的性質を同定する方法を,相関解析に基づくKobayashi et al.(Nat. Commn. 2019)の方法を拡張することで開発した.さらに,Neuropixelsなどで取得された標準的な形式の大規模神経スパイクデータから,そのスパイクデータを生成している神経回路の複雑ネットワーク的性質を同定する解析システムを,他の実験研究者が使用しやすい形で構築することを進めた.また,研究協力者から提供を受けた,行動中のサルから計測された大規模神経スパイクデータに対してその手法の適用を開始した. 次に,大規模神経スパイクデータから構成細胞の機能的固有特性を同定する方法に関して,大規模神経スパイクデータから得られる個々の構成細胞のスパイク時系列(ユニット)に対して,スパイク時系列の発火率,不規則発火指標(logκ,Lv,間隔分布のベキ指数α)を求め,これらの構成細胞の固有特性を表す指標が複雑ネットワーク上でどのように分布するのかについての解析を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究計画は,大規模神経スパイクデータから背景にある神経回路の複雑ネットワーク的性質を抽出するシステムを構築すること,その構成要素である各神経細胞のスパイク時系列の統計量がそのネットワーク上でどのように分布するのか調査するシステムを構築すること,そしてこれらのシステムを実際の実験データに適用することであった.実際には,相関解析に基づくKobayashi et al.の方法が,必ずしも適用できない実験データが存在することが明らかになり,それを改善する手法を提案した.また,Kobayashi et al.の手法が適用できない実験データが共通にもつ性質の背景には,共通の数理構造をもつ神経ダイナミクスが存在することが理論解析と数値シミュレーションにより示唆された.この他のデータ解析システム構築は,複雑ネットワークの解析のうち高次相関モデリングやHodge-Laplacian分解について終了しなかった点を除いて,ほぼ予定通りに進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,引き続き,大規模神経スパイクデータから背景にある神経回路の複雑ネットワーク的性質や構成要素の特徴量の分布を抽出するシステムの構築を続け,完成を目指す.また,従来の相関解析が適用できない実験データの背後に存在する神経ダイナミクスに関する論文を執筆する.さらに,複数の領野から計測された神経活動データを実験協力者の筑波大学の山田洋博士より提供を受け,そのデータを分析するとともに,適応脳機能に関わる神経活動データを分析することで,機能的固有特性の分布を含めた適応脳機能の要素回路のネットワーク構造を明らかにし,そのネットワークから生成される要素ダイナミクスを明らかにすることを目指す.
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