研究領域 | 神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム |
研究課題/領域番号 |
22H05519
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
揚妻 正和 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主任研究員 (30425607)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 二光子イメージング / population coding / 情動のハブ因子 / 前頭前野 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
情動は喜怒哀楽の感情であり、生存に関わる記憶・判断に不可欠である。一方、情動異常を伴う様々な精神疾患も知られ、その多くで決定的治療法の確立に至っていない。脳内演算・遺伝的背景・個体内外環境など、多様な要因が互いに影響する複雑な制御基盤がそれを妨げる一因である。本課題は光学・機械学習による脳回路動態を紐解く独自技術と遺伝子プロファイル技術を融合することで、情動制御の包括的理解とハブ因子同定を目指す。揚妻が開発してきた独自の光学・数理解析技術を基軸に、過去の生化学・分子生物学分野の経験も生かし、更に領域内での実験技術・数理解析における連携を介して実現させる。 2022年度は、分子プロファイルを網羅的に解析する技術により(申請者がこれまで携わった)抑制性神経細胞・グリア細胞などを含む多様な細胞サブタイプの中から恐怖情動記憶に関わる候補をデータ駆動型に絞りこむことを目指した。一方で、領域会議や領域が提供する様々な情報収集の機会、領域内の経験豊富な専門家との議論を通じて、様々な新技術が出てきていると同時に非常に競合的な状況になってきていることも分かった。そのため、研究目標や解析対象の独自性が非常に重要であると考え、領域内での議論を参考に、心拍計測など情動状態を反映する観察個体の内的状態を反映する指標の計測系と、さらに新たな行動評価系を構築し、それらが統合された新たな脳活動計測系を完成させた。 更に2光子イメージング技術により得られた脳活動データに対し、独自の機械学習解析技術を適応し、そこから見出した情動制御の脳内メカニズムについて、上記の新行動評価技術による観察を組み合わせた研究成果として論文化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は光学・機械学習による脳回路動態を紐解く独自技術と遺伝子プロファイル技術を融合することで、情動制御の包括的理解とハブ因子同定を目指している。今年度はそれにむけ、本課題での成果と、それまで培った光学・機械学習による脳回路動態を紐解く技術とを組み合わせたことで分かってきた内容の論文化を進めることができた。その結果、リバイスした内容に関する2023年度開始早々の再投稿の準備が整った。 さらに、領域会議や領域が提供する様々な情報収集の機会、領域内の経験豊富な専門家との議論を通じて、分子プロファイルを網羅的に解析するための予備的な検討を十分に進めることが出来た。 これらの結果から、概ね順調と言えると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」の項で説明したとおり、本研究の成果の論文化を進めており、2023年度内の論文化を目指す。
更に、情動制御に関する脳内・網羅的分子プロファイル技術を用いた本実験を開始し、その要となる分子、および細胞サブタイプの選定へと進める。
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