KIF5Aはキネシンスーパーファミリーのモータータンパク質で、神経細胞内でミトコンドリア、リソソーム、RNA複合体といったさまざまな荷物を軸索輸送している。KIF5Aの変異は、家族性および弧発性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こすことが知られている。複数のALS変異が見つかっているが、これらALS変異のほとんどはKIF5Aのイントロンにあり、KIF5A mRNAのミススプライシングを誘発する。その結果、ヒトKIF5AではKIF5Aの貨物結合尾部ドメインをコードするエクソン27をスプライシングアウトすることに繋がる。そのため、ALSはKIF5Aの機能喪失によって引き起こされると考えられてきた。私たちの本年度に実施した研究の結果、ALS型KIF5Aは神経細胞内で凝集を引き起こすことがわかった。不思議なことに精製したALS型KIF5Aは、野生型KIF5Aよりも微小管上を活発に運動することがわかった。精製したALS型KIF5Aは試験管内の実験で凝集体を形成しやすかった。さらに、ALS型KIF5Aを発現させた線虫の神経細胞では、軸索の細断、軸索の迷走、神経細胞そのものの変性と言った形態的な異常が見られた。これらのデータから、ALSに関連するKIF5Aの変異は、単純な機能喪失型変異ではなく、毒性のある機能獲得型変異であることが示唆された。 また、計画班に協力し、微小管がCAMSAP2と呼ばれるタンパク質から重合する様子を観察することに成功した。さらにKLP-12とよばれる微小管の重合を止めるユニークなモーターがその活性を発揮するメカニズムを明らかにした。
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