筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因となるKIF5A変異を精製したタンパク質を用いた生化学および細胞生物学の手法によって解析した。 KIF5Aは健常人型の場合は2量体の画分から溶出される。筋萎縮性側索硬化症型変異を導入するとKIF5Aの尾部にフレームシフトが起こり、異常なC末端が付加される。この筋萎縮性側索硬化症型KIF5Aは通常の2量体の画分ではなく、2量体以上の画分に溶出されることからオリゴマーを形成していることがわかった。このオリゴマー型KIF5Aは非常に高い活性を持っていることがわかった。 培養細胞内では筋萎縮性側索硬化症変異を持つKIF5Aは凝集を形成した。凝集の原因は筋萎縮性側索硬化症変異によって異常なC末端が付加されることによって生じることがわかった。実際、この異常なC末端部位のみを細胞に発現すると凝集を形成することが確認できた。次に筋萎縮性側索硬化症変異が健常人型の正常なKIF5Aの性質にも影響を与えるかどうかを解析した。その結果、筋萎縮性側索硬化症変異によって生じる凝集は筋萎縮性側索硬化症変異型KIF5Aのみならず健常人型のKIF5Aも巻き込むことが確認された。KIF5AはKIF5BおよびKIF5Cと呼ばれるアイソタイプが存在する。これら二つのKIF5アイソタイプもまたこの凝集に巻き込まれることがわかった。これらの実験より筋萎縮性側索硬化症型のKIF5A変異がおこるとKIF5AだけでなくKIF5BやKIF5Cといった他のキネシンも巻き込んで細胞に広範な影響を与える可能性が示唆された。
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