研究領域 | クロススケール新生物学 |
研究課題/領域番号 |
22H05539
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 洋平 京都大学, 薬学研究科, 講師 (90568172)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 一次繊毛 / 繊毛病 / IFT装置 / トランジションゾーン / ゲノム編集 / 膨張顕微鏡法 / 超解像顕微鏡 |
研究実績の概要 |
一次繊毛は細胞のアンテナとして機能するオルガネラであり、その異常は繊毛病と呼ばれる多様な重篤症状を引き起こす。これらの症状は、一次繊毛の形成や機能維持に重要な役割を果たす繊毛内タンパク質輸送(Intraflagellar transport: IFT)装置およびトランジションゾーン(Transition zone: TZ)の異常により引き起こされる。本研究では、IFT装置とTZのメゾスケール(20-500 nm)での構造-機能相関を解明することを目指す。
昨年度の研究では、繊毛やTZに局在し、繊毛病のメッケル症候群(MKS)、ジュベール症候群(JBTS)、バルデー・ビードル症候群(BBS)の原因となる3種類の機能未知遺伝子の解析に取り組んだ。まず、不死化ヒト網膜色素上皮細胞(hTERT-RPE1)において、CRISPR/Cas9を用いて繊毛病原因遺伝子のノックアウト(KO)細胞を樹立した。次に、それぞれのKO細胞における繊毛形成能、繊毛長、繊毛タンパク質の局在、ヘッジホッグシグナルに応答するGPCRの局在変化などを蛍光顕微鏡によって観察した。これにより、樹立したKO細胞は繊毛形成に大きな影響はないが、繊毛局在タンパク質に異常が生じていることが判明した。今後の研究では、レンチウイルスベクターを用いて野生型遺伝子および繊毛病型遺伝子をKO細胞に導入し表現型を比較する。
さらに昨年度は、膨張顕微鏡法の一種であるUltrastructure expansion microscopy(U-ExM)の条件検討を行った。その結果、IFTタンパク質が繊毛の基底小体において9回対称構造を取る様子をクリアに観察することができた。今後は確立したU-ExM法を用いてIFT装置やTZのメゾスケール構造の超解像観察を行い、それらの構造と機能の相関を詳細に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究は概ね順調に進展していると自己評価している。これまでの成果として、繊毛病のメッケル症候群(MKS)、ジュベール症候群(JBTS)、バルデー・ビードル症候群(BBS)の原因となる3つの機能未知遺伝子のノックアウト(KO)細胞を樹立し、それらの表現型を解析した。これにより、繊毛病に関連する遺伝子の機能解析が順調に進んでいると考えられる。
また、膨張顕微鏡法の一種であるUltrastructure expansion microscopy(U-ExM)の技術基盤を確立し、IFTタンパク質が基底小体において9回対称に局在している様子をクリアに観察することができるようになった。この手法により、繊毛やトランジションゾーン(TZ)のメゾスケール構造観察に関しても有望な成果が得られている。
一方で、うまく行っていない部分もある。TZには核膜孔複合体の構成タンパク質であるいくつかのヌクレオポリン(NUP)が局在し、繊毛孔(Ciliary pore)を構築していると考えられている。そのため、いくつかのNUPタンパク質について細胞内の局在を観察した。結果として、NUPが繊毛の根元周辺に局在していることを確認することができたが、先行研究で言われているようなTZに局在しているわけではないことがわかった。そのため、予定していたTZにおけるNUPの役割については予定通りには進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、以下の3つを中心に進めていく予定である。 1. 繊毛病原因遺伝子の機能解析: 昨年度に樹立した繊毛病原因遺伝子のノックアウト(KO)細胞に、野生型遺伝子および繊毛病型遺伝子をレンチウイルスベクターを用いて導入し、レスキュー細胞を樹立する。これらの細胞を蛍光顕微鏡で観察し、表現型の違いを比較することにより、繊毛病の発症機序を解明することを目指す。 2. 超解像顕微鏡法を用いたIFT装置およびTZの構造解析: Ultrastructure ExM (U-ExM)を用いて、IFT装置やTZの微細構造を超解像観察する。これまでに作製したさまざまな繊毛関連遺伝子のKO細胞を活用し、野生型の細胞とKO細胞においてIFT装置やTZの構造にどのような違いがあるのかを明らかにすることで、繊毛の構築機構や繊毛病の発症機序に関する知見を深める。 3. ヌクレオポリン(NUP)のTZへの局在問題の解決: NUPのTZへの局在に関する問題に対処するため、異なるタンパク質標識法や試薬を用いて実験を検討する。これにより、NUPの正確な局在および機能を解明し、TZの構造と機能に関する理解を深めることを目指す。
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