細胞内のタンパク質分解はユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー・リソソーム系が中核を担っている。近年、タンパク質分解系が液-液相分離を介してユビキチン陽性のメゾスケール構造体を形成することが相次いて報告されている。これらタンパク質分解系を介した構造体の形成には共通してユビキチン化基質とアダプタータンパク質(ユビキチンデコーダー)が必須である。我々は試験管内におけるユビキチン液滴再構成系の確立に取り組み、プロテアソームのユビキチンデコーダー(RAD23B)とオートファジーのユビキチンデコーダー(p62)がユビキチン鎖を介して共相分離することを見出した。また、ピューロマイシン処理による翻訳ストレスに応答してプロテアソームが「ユビキチン陽性凝集体」を形成することを見出した。免疫染色の結果この構造体にはユビキチン、プロテアソーム、RAD23Bといったプロテアソームによるタンパク質分解に関与する因子以外にもUBQLNファミリーやp62などのオートファジーに関与する因子を含むことが明らかとなった。これら因子のノックダウンによるピューロマイシン依存的なユビキチン構造体の形成能を検討したところRAD23BおよびUBQLN1ノックダウンにより構造体の数が減少することが明らかとなった。さらに、ユビキチン構造体のクリアランスにおけるタンパク質分解活性の必要性を検討したところ、プロテアソームまたはリソソーム阻害剤を処理するとユビキチン液滴のクリアランスが遅延することから、プロテアソームとオートファジー両方の活性が必須であることが明らかとなった。よって、このユビキチン陽性の構造体を介してプロテアソームとオートファジーによるタンパク質分解が協調的に機能していることが示唆された。
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