公募研究
チオ―ル(RSH)は、酸素類縁体であるアルコール(ROH)と比較して「プロトン(H+)を放出しやすく」「水素ラジカル(H・)を放出しやすい」という興味深い二面性を有する。このような硫黄の持つ電子授受の流動性は生体内では高度に制御されたシステムとして生体活動の維持に活用されているが、生体外や産業界においてこの酸化還元が効果的に機能する事例は限られる。本研究では、硫黄のこの柔軟な電子状態を制御し、有機金属化学と化学工学、そして生化学の三分野横断により、二酸化炭素およびその還元体を含む種々の分子の還元反応を開発することを目的とする。目標の一つに、二酸化炭素の還元による直接的なシュウ酸合成を想定している。生成物であるシュウ酸は製鉄におけるコークスに代わる還元剤としての利用を想定しており、硫黄を鍵とした Net-Zero-Emission 型の次世代製鉄法の実現を目指す。本年度はCO2の水素化体であるギ酸塩の脱水素二量化によるシュウ酸合成における塩基の影響について精査し、用いる塩基のアニオン種のみならず対カチオンが反応性に大きく影響することを見出した。これらは最終目的であるCO2と硫黄アニオンによる1電子酸化還元を実施する上での大きな知見となる。また九州大学との共同研究により、化学工学的手法によるCO2からのシュウ酸合成について、炭酸塩の活性炭への担持が反応収率および生成物の選択性に大きく影響を及ぼすことを見出した。以上の成果について学会発表および論文発表し、うち1件の国際学会発表賞、1件のKeynote Lecture という成果を修めた。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は第一に研究環境の整備を行った。常圧のみならず加圧下でのCO2雰囲気下での光照射が実施できるよう、金属製ではなく透明なポリカ―ネート樹脂で保護された耐圧反応容器を導入した。第二に、CO2の直接的な還元に先駆けて、その水素化体であるギ酸塩の脱水素二量化について実施した。その結果、収率よくシュウ酸を合成するのみならず、予想以上の成果として、用いる塩基の塩基性を決定するアニオン種のみならず、その対カチオンが反応性に大きく影響することを見出した。これらはCO2に対するスルフィドアニオンによる1電子酸化還元を実施する上での大きな知見となった。また九州大学との共同研究により、化学工学的手法によるCO2からのシュウ酸合成について、炭酸塩の活性炭への担持が反応収率および生成物の選択性に大きく影響を及ぼすことを見出した。以上の成果について学会発表および論文発表し、うち1件の国際学会発表賞、1件のKeynote Lecture という成果を修めた。
2年目はCO2からの直接的なCO2ラジカルアニオンの効率的発生およびシュウ酸合成に着手する。先行研究に倣い、適切な光触媒を選定するのみならず、1年目に得られた知見に基づき、体カチオンの種類がカップリングいn及ぼす影響について調査する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
ISIJ International
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https://researchmap.jp/tahara.a.aa