本研究では、超硫黄がZnフィンガードメイン構造を有する広範なタンパク質において、亜鉛の結合・遊離のメカニズムに深く関与していると予想し、脳において超硫黄と亜鉛を結合しているタンパク質を探索・同定し、その機能性と関係性を解析することを目的としている。本年度はまず、マウス脳サンプルを細胞分画して、核画分、サイトソル画分、ミトコンドリア画分を調製し、遠心式フィルターユニットを用いて低分子を取り除いて高分子画分を得た後、各画分におけるタンパク質に結合した亜鉛量とサルフェン硫黄量を、亜鉛結合量についてはICP-MS法にて、サルフェン硫黄については親電子プローブを用いたLC-MS法にてそれぞれ定量して比較した。その結果、いずれにおいても核画分が最も高かったことから、核画分に亜鉛結合型の超硫黄タンパク質が多く含まれていることが示唆された。その後、核高分子画分を陰イオン交換カラムクロマトグラフィーで分離し、タンパク質を分離した。その結果、カラムの非吸着画分と吸着画分の両方に亜鉛と超硫黄を多く含むフラクションが存在したことから、それらの含有量が高い両方のフラクションを集めて、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーでそれぞれ分離した。得られたフラクション中において、亜鉛と超硫黄の含有量が多いサンプルをそれぞれ電気泳動したが、複数のバンドが確認された。そこで、更にタンパク質を単離・精製するために別のカラム(ブルーセファロースカラムなど)でタンパク質を分離する作業を現在も行っている。残念ながら単離・同定を行うという当初の目的は研究期間内では達成できなかったが、これまでに得られた結果より、多くの亜鉛結合タンパク質に超硫黄が結合していることが示唆された。この結果を次に生かせるように引き続き、当該研究を継続する。
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