研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05569
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
猪熊 翼 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 講師 (40541272)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | 超硫黄分子 / 硫黄導入試薬 / 有機合成 |
研究実績の概要 |
本研究は『超硫黄分子を効率的に合成する新規手法の確立』を目的とする。硫黄原子が直鎖状に連結した超硫黄分子が生体内に豊富に存在し、それらがエネルギー産生に深く関与することが2014年に赤池らによって報告されて以来、超硫黄分子の機能解明研究は生命の仕組みを新しい観点から理解するアプローチとして大きな注目を集めている。しかしこれまでに超硫黄分子の効率的な合成法は確立されていなかった。研究代表者は超硫黄分子の新規合成法の確立を目指しモデルジスルフィド化合物を用いた硫黄原子導入反応によるトリスルフィド合成を検討した結果、添加剤の違いにより生成する超硫黄分子の硫黄数が変化することが分かり、所望のトリスルフィドを中程度の収率で得る条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収率には改善の余地を残すものの、添加剤を最適化することで良好な純度でジスルフィドをトリスルフィドに変換する反応条件を見出すことができたため、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、モデルチオール化合物に硫黄原子を1つ導入した保護ジスルフィド分子に対して前年度見出した硫黄導入反応の更なる最適化を行う。脱保護に用いる試薬や保護基を捕捉する添加剤、および反応溶媒を検討することで、基質の保護ジスルフィドを高収率かつ高純度で対応するトリスルフィドに変換する反応条件を見出す。上記の試薬や添加剤の利用によって良好な結果が得られない場合、チオール基の保護基を検討し、最適な脱保護効率を示すものを探る。また、同時に硫黄導入試薬側の活性化基も最適なものを探索することで結果の更なる改善を図る。 最適条件を確立した後、本反応で得られるトリスルフィド分子に再度硫黄導入反応を適用することで、テトラスルフィド分子へと誘導し硫黄原子の更なる伸長を試みる。 モデル基質での硫黄伸長プロセスの確立後は、基質チオール分子の適用範囲を探索する。その過程で、抗腫瘍活性を有することが知られているベンジルポリスルフィドや抗炎症作用が報告されているN-アアセチルシステインポリスルフィド合成への展開も試みる。
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