研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
22H05579
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
三田 雄一郎 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (70609122)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | Selenoprotein P / 超硫黄 / インスリンシグナル / Cys |
研究実績の概要 |
Selenoprotein P(SeP)誘導性インスリン抵抗性の原因として、細胞内のCysの増加と、超硫黄によるインスリンシグナル制御に着目して解析を行った。 ①SePによる細胞内Cys増加メカニズムの解析 SePによって細胞内のCysの増加が引き起こされるメカニズムの解析を行った結果、SePで刺激した細胞では、細胞内でCysに還元されるシスチンを細胞内に取り込む受容体xCTが、mRNA,タンパク質レベルで増加していることが明らかになった。Cys代謝酵素の減少は認められなかったため、xCTの増加がCysのぞうかを引き起こしていることが示唆された。 ②SePによるインスリン抵抗性に対する超硫黄・Cysの影響 SePの主な作用は、細胞内にSeを運搬することである。また、①で明らかになったようにCysを増加させる作用も有する。このどちらがインスリンシグナルを負に制御しているのかを検討した。その結果、Seの添加はインスリンシグナルに影響を与えなかったが、Cysを増加させるNACを添加すると、インスリンシグナルが抑制された。Cysの作用点を調べた結果、CysのSH基に複数の硫黄原子が付く超硫黄化を、Cysが抑制していることが明らかになった。超硫黄化を誘導した細胞では、インスリン感受性が亢進するのに対し、NACによってCysを増加させた細胞では、超硫黄化によるインスリン感受性の更新がキャンセルされた。このことから、SePによって過剰になったCysが超硫黄化を抑制することで、インスリン感受性を抑制していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度のうちにCysによって超硫黄化が抑制されるたんぱく質を同定する予定であったが、筋肉細胞からの超硫黄タンパク質の抽出条件の検討に時間がかかってしまい、同定することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
超硫黄化タンパク質検出のの条件検討がほぼ終わり、現在各タンパク質の超硫黄化状態の解析を進めている。Cysを増加させた状況でのインスリンシグナルタンパク質の超硫黄化状況を調べることによって、SeP誘導性のインスリン抵抗性メカニズムの解明を行う。 その後、同様の方法で糖尿病モデルマウスの各組織における超硫黄化状況の変化を調べることで、糖尿病と超硫黄の関連をin vivoレベルでも解明することを目指す。
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