申請者の最近の研究で、核小体ストレス、特にリボソームRNAのプロセシングが阻害されると、TAF15/FUSやSFPQ/NONOのような天然変性領域をもつRNA結合タンパク質が、プロセシングされていないリボソームRNAに結合しながら液―液相分離によって集合し、核小体領域に巨大なスペックルを形成することが明らかとなった。スペックルの形成は可逆的であり、ストレスがなくなると速やかに解消されることがわかっている。このような核小体に形成されるスペックルは、ゲノムの転写活性化領域を巻き込むことから、スペックルが大規模なゲノム構造変換を誘導し、それによってクロマチンのアクセシビリティを大きく変化させる可能性があると考えて研究を開始した。実際、スペックルの誘導によって転写のプロファイルが大きく変化しうることを示唆するデータが得られた。その後の実験で、スペックルの生理的な機能に関連して、様々なRNA修飾、編集、代謝に関わる因子がスペックルの形成に関与するという予想外の結果が明らかとなった。そこで研究の方針を転換し、それらの因子がどのようにスペックルの形成に関わるかについてさらに追究することにした。その結果、ストレス下で核小体に形成される凝集体の生理的意義の解明につながる結果が得られた。
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