本研究では、「A. マウス体外胚培養システムの構築」、「B. Hippo経路のもたらす器官形成期の競合的コミュニケーションの実態解明」に取り組んできた。 A.については、昨年度までに体外胚培養機器を設計・作製しており、本年度は体外胚培養条件の検討を重ねた。培地条件や酸素濃度、回転数や圧力などの物理的条件を検討し、マウス胎仔を子宮外でE7.5からE11.0相当まで発育させられる方法を確立した。体外胚培養機器で発育したマウスは体節や諸臓器の形成において、子宮内で発育したマウスと形態学的に同様の特徴を示した。一方、E11.5付近からは四肢原基を中心として発育の遅れが認められ、今年度までに検討を重ねた培養プロトコルでは同時期までの発育が限界であると考えられた。 B.については、昨年度の検討からタモキシフェン誘導性のCre遺伝子発現を用いて散発的に遺伝子変異を導入する方針とし、Hippo経路に関連する遺伝子のFloxマウス、遺伝子欠損を起こした細胞を蛍光分子tdTomatoで標識できるR26R-tdTomatoマウス、および、タモキシフェン誘導性(CAG-Cre-ER)のCre遺伝子を発現するマウスを交配することにより、目的のマウスを作出した。その後、これらのマウスを用いて低容量タモキシフェン存在下で散発的なHippo経路の変異を導入するため、適切なタモキシフェン濃度の検討を行った。さらに、Hippo経路の散財的な遺伝子変異を導入したマウス胎仔を体外胚培養システムで培養し、1つの細胞におけるHippo経路の変化が周辺細胞に及ぼす影響について調べた。 以上の研究成果をふまえ、マウス体外胚培養システムに関する技術開発と器官発生期におけるHippo経路の役割について、学会発表や論文発表を行なった。
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