研究領域 | 競合的コミュニケーションから迫る多細胞生命システムの自律性 |
研究課題/領域番号 |
22H05642
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
高田 慎治 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 教授 (60206753)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
|
キーワード | 遺伝子 / 細胞 / 発生・分化 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
集団内の不均一性は細胞競合により解消される。しかしながら、研究代表者のこれまでの研究により、マウス胚の後端に位置する神経中胚葉前駆細胞集団においては、その前段階としてWntリガンドの相互交換によりWntシグナルの格差をできるだけ拡大させない仕組みがあり、この両者が重層的に機能することによって細胞集団の大きさと質が最適化されるという可能性が強く示唆される。本研究ではこの仮説を検証するために、Wntリガンドの相互交換すなわちパラクリンシグナルのみが欠失したWnt3aノックインホモ個体胚を用いた。この胚では、神経中胚葉前駆細胞集団内におけるWntシグナルレベルの不均一性が拡大するが、活性化カスパーゼ3抗体による免疫組織染色等により検出できるアポトーシスも亢進していた。このことから、Wntシグナルレベルの不均一性の拡大が細胞競合の出現頻度を高めていることが示唆された。 本研究では同時に、神経中胚葉前駆細胞集団だけでなく、同様なWntリガンドが発現する神経管背側領域におけるWntリガンドの相互交換の意義についても検討した。神経管ではWnt1とWnt3aが機能的に補完しあうことから、パラクリンシグナルのみが欠失したWnt3aノックインホモ個体胚にWnt1変異導入したマウス胚を作成し、神経管の発生を詳細に検討した。当初の想定に反し、Wnt1/3aノックインホモ個体胚の表現型解析により、Wntによる制御が従来のモデルとは異なる機構で行われていることが示唆された。現在、その詳細についての解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
神経管におけるパラクライン欠失Wntマウスの解析から、従来の定説とは異なるWntの作用機構が示唆された。この結果は当初の予想を超えた新しい発見につながる可能性を示唆しており、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
神経管の解析において従来の定説を覆すWntの作用モデルが示唆されたことから、その実証に向けた研究を進めていく。
|