研究実績の概要 |
通常、個体間距離(>5cm)を保持するホタテガイは、ヒトデが接触すると逃避行動を取り、結果として個体間の距離が縮まり、30~50個体/㎡の集団が何度も形成された。ホタテガイは自由遊泳性の濾過摂食者として、餌の効率的摂取を目指して一定の個体間距離を保持する基本的な行動パターンを有しているが、捕食者の存在下での行動は従来考えられていた単独行動の結果から、集団形成を通じた捕食回避に大きくシフトする可能性が明らかになった。 ホタテガイの集団形成条件をモデル化したところ、集団形成の密度が高まるとその発生回数が減少する傾向があった。これは、集団密度の増加により、ホタテ同士の相互作用が増えるため、より分散して行動する傾向があるか、または高密度条件下での集団形成が物理的に困難であることを示唆している。さらに、捕食者の存在は集団形成を促進する要因となり、捕食者からのリスクに対処するために集団化行動を取ることがホタテにとって適応的であることを示唆した。 様々な条件下でのホタテガイの行動情報(1,200個体分)に基づいてクラスタリングした結果、全て生存個体で構成されるクラスター3群と全て死亡した個体で構成されるクラスター1群に分けられた。死亡した個体で構成されるクラスターは、50個体/㎡以上の集団形成への参加数が少なく、それらの集団形成の維持時間も短かった。これは集団行動が個体を捕食者から守る効果的な戦略である可能性を示唆しており、集団行動が捕食リスクの減少に貢献している場合、この行動をあまり取らない個体は捕食リスクが高まることが予想される。本研究を通じて、水槽内での底生生物の行動を機械学習により自動追跡する技術が確立されたため、今後他の研究への応用が期待される。
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