公募研究
被子植物が受精を達成するためには、オスの単細胞「花粉管」が“知能”を発揮しながら(伸長、誘引応答といった挙動制御)、花粉管のために整備された雌しべの“ジオラマ環境”を進んでいく必要がある。本研究では、(1)「花粉管はどのように複数の受容体を使い分けながら雌しべのジオラマ環境を進むのか」、(2)「どのような物性的・分子的基盤が花粉管の通り道を規定しているのか」という問いを研究することで、被子植物が有性生殖のために進化させた花粉管の挙動制御アルゴリズムの理解を目的とした。(1)に関して本年度、prk七重変異体およびprk;mdis九重変異体に異種PRKを再導入した株の花粉管の挙動を詳細に解析した。その結果、誘引ペプチドLURE1の受容体であるPRK6が花粉管の誘引応答においてだけでなく、伸長制御においても中核となって機能しており、この機能はMDIS受容体によって増強されていることが遺伝学的に示された。さらに、このMDIS受容体の要求性はPRK6タイプ受容体の種特異的な配列によって媒介されていることも示唆された。これらの結果は、「花粉管の種特異的な誘引応答はPRK-MDIS受容体の組み合わせにより頑健に制御されている」という花粉管の“知能”の分子実体に迫るものである。(2)に関して、培地上で花粉管を伸長させる実験系に雌しべ組織、花粉管制御タンパク質や様々な化合物を添加することで、雌しべの“ジオラマ環境”を構成的に調べる実験を行った。胚珠組織との共培養により、花粉管の伸長・誘引の挙動が変化することに加え、もう一つの花粉管挙動である破裂が抑制されることを見出した。異種の胚珠と共培養した際もこの破裂抑制が見られたため、種特異性の低い物質、例えば細胞壁から遊離してくる成分の関与が予想された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Plant Cell
巻: 35 ページ: 1222~1240
10.1093/plcell/koac371
bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2023.11.13.566818