研究領域 | デジタルバイオスフェア:地球環境を守るための統合生物圏科学 |
研究課題/領域番号 |
22H05704
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
両角 友喜 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 特別研究員 (40866638)
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研究期間 (年度) |
2022-06-16 – 2024-03-31
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キーワード | クロロフィル蛍光 / 地上リモートセンシング / 衛星観測 / 高分解能植生反射スペクトル / 炭素循環 |
研究実績の概要 |
落葉針葉樹林・落葉広葉樹林・常緑広葉樹林の地上観測サイトの高波長分解能分光データから太陽光誘起クロロフィル蛍光SIFの導出を行い、衛星データとの比較や、SIFと生態系の二酸化炭素吸収量(総一次生産量:GPP)の応答について解析を進めている。土地被覆・森林マップの対応付けによる衛星SIFデータのフットプリント評価についてのプログラムを作成した。衛星SIFプロダクトの内、GOSAT-2のデータについて観測点の抽出と地上―衛星間の比較を行い速報として学会にて発表した。現地調査による機材の校正維持作業を実施できた。さらに調査では樹木や下層植生の個葉について、リーフクリップと光学フィルタ・分光放射計を組み合わせて複数生態系の網羅的なクロロフィル蛍光スペクトル(650-800nm)とクロロフィル濃度指標との関係についてデータセットを作成しており、次年度さらにサンプルを追加する予定である。これについては関連研究プロジェクトとの協力のもとで熱帯の常緑広葉樹林へも活動の幅を広げて発展させている。これらの成果を地上SIFから衛星SIFへのスケーリングの観点でまとめ、個葉クロロフィル蛍光からボトムアップにより係数をもとめる手法を提案し国際学会で発表を行った。今のところこのようなアプローチは報告例がほとんどなく、様々な意見が聞かれた。とくに落葉広葉樹林の地上観測SIF-GPP応答性について以前の研究成果をまとめた論文が出版された。これによって地上観測に基づくSIF-GPPの関係を陸上生態系における炭素循環の広域評価に利用する手段が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地上観測サイトのSIFデータは予定通り取得できており、解析を進めている。衛星データの抽出についてもすでに各種森林タイプに対応するデータ抽出が進み、地上データとの比較まで進んでいるものがある。また、地上観測と衛星データのデータ統合にあたり個葉蛍光にもとづく手法を開発中である。その基礎となるデータについて現地調査にて取得が進行しており、計画以上に広がりを見せており、さらにその成果の一部は学会発表まで進めることができた。社会的な感染症対策等による影響は少々あったが、計画全体には大きな影響はなく成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
前年に引き続き、落葉針葉樹(富士北麓;FHK:35.4°N, 138.8°E)・落葉広葉樹及び常緑林床(岐阜高山;TKY: 36°N, 137°E)・常緑広葉樹(沖縄与那;YNF: 27°N, 128°E)の3サイトを軸に、異なる森林生態系の地上SIFを導出する。現地調査により、観測機材の校正・維持および個葉測定による分光学的・植物生理学的パラメータ取得を行う。研究発表に向けて主に生育期中盤の葉量が安定的な期間について生態系タイプごとのSIF-GPP変換係数をまとめる。最新版GOSAT-2プロダクトへの更新など衛星SIFデータを収集し森林マップとの対応付けと緯度経度に基づくデータ抽出を行う。これらのデータに基づき地上観測と衛星観測をつなぐ理論とボトムアップ手法の提案を行う。着葉期CO2吸収量の推定精度を確かめ、全期間におけるSIFおよび植生指数に基づくCO2吸収量推定精度の違いについて比較検証し、葉のついている期間の光合成の変動を定量的に評価する。 また本年度の領域研究グループ全体の集中観測(キャンペーン)においては、標的サイトである落葉広葉樹混交林(北海道苫小牧; TMK: 43°N,141°E)の生態系においてタワー上でSIF連続観測と、植物種の個葉におけるクロロフィル蛍光スペクトルを取得することで、ほかの参画研究の手法との対比や異分野交流による相乗効果についての探索、また本課題の主題としての着葉期での短期的な植物の活性についての変動や、多様な生態系間のSIF応答の違いについての考察をさらに深めることができる。期間終盤にはこれらの研究成果をまとめて発表する。
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備考 |
国際共同研究は本事業主導ではなく京都大学・北海道大学のプロジェクトに協力する形で実施された。
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